
うつ病では、抑うつ気分と不安症状の改善は、治療を進める上でどの病期においても、鍵となる症状であり、神経生理学的にみても、強い相互関係にあります。この抑うつ気分と不安症状の発現にはセロトニンとノルアドレナリンが関与しており、この関係性についてご説明させていただきます。
昭和大学病院附属東病院 精神神経科 准教授 高塩 理 先生

抑うつ気分、不安症状とセロトニン・ノルアドレナリン分泌不全の関係

うつ病患者さんでは、脳幹の縫線核において、セロトニンの分泌不全が生じること、また、青斑核において、ノルアドレナリン分泌不全が生じること、これらによって神経伝達の上行性投射に変調をきたし、抑うつ気分や不安などの症状が現れると考えられています。

起始核における、ストレス反応時のセロトニンとノルアドレナリンのフィードバック機構


ストレス反応が正常状態の場合は、急性のストレスが発生すると、これに対処するためにノルアドレナリンが境界域を超えて放出され続けると、縫線核よりセロトニンが分泌されて、ノルアドレナリン神経に抑制をかけます。ノルアドレナリン分泌が通常域のレベルに戻るという制御システムがあります。このようにして、ノルアドレナリン分泌が通常域のレベルに戻るという制御システムがあります。

異常な急性ストレスの場合には、本来抑制をかけるセロトニンの分泌が弱まるため、ノルアドレナリンの分泌抑制がかかりにくくなり、病的な領域でノルアドレナリン分泌が続き、不安症状の発現へとつながります。
うつ病患者さんにおける、抑うつ気分と不安症状の発現頻度と残遺症状
臨床症状の面から見ても、抑うつ気分と不安は、相互に関係していると考えら、うつ病患者さんの95%が不安症状を伴い、残遺症状として残りやすいのも、抑うつ気分と不安であることが報告されています。
このようにセロトニンとノルアドレナリンは相互関係にあるため、うつ病の治療では抑うつ気分と不安の両方の症状をターゲットとした治療戦略が重要になってくると言えます。

世界初、イフェクサーSRのノルアドレナリントランスポーター占有率を検討したPET研究の意義
イフェクサーSRは、セロトニンとノルアドレナリン、両方のトランスポーターに作用するSNRIです。これまで、イフェクサーSR75mg/日投与時に、セロトニントランスポーターの占有率が80%を超えることがエビデンスとして報告されていました。
うつ病患者さんを対象とした、世界初のPET Studyによって、イフェクサーSRがノルアドレナリントランスポーターも占有することが示され、その占有率は用量依存的に、上昇することが明らかになりました。
イフェクサーSRは低用量ではセロトニン系に対してSSRIと同等のセロトニン作用を示し、高用量ではセロトニン系と共にノルアドレナリン系にも作用する薬剤特性があると言えます。

ノルアドレナリンとセロトニンの調整は相互関係にあるため、このどちらに対してもイフェクサーSRの作用メカニズムがエビデンスとして示されたことは、大きな意味があると思います。
