
今回、世界で初めてうつ病患者を対象としたPET研究によって、イフェクサーSRのノルアドレナリントランスポーター占有率が測定されました。
このPET研究の詳細をご説明させていただきます。
医療法人聖美会 多摩中央病院
理事長 大久保 善朗 先生

1980年代から始まったうつ病のPETを用いた分子イメージング

1980年代からPETを用いることによって、生きているヒトで神経伝達系が測定できるようになりました。このような分子イメージングを用いて、うつ病患者についてもセロトニン1A、2A、セロトニントランスポーターなどの測定が行われてきました。
イフェクサーSRでも、セロトニントランスポーターへの影響について、イフェクサーSR1日75mg服用時に、占有率が80%を超えることがすでに示されています。
Meyer, J. H. et al.:Am J Psychiatry 161(5):826, 2004 L20040811019]より改変
これまでのPET研究でさまざまなSSRIは80%以上のセロトニントランスポーター占有率を示すことが知られています。
つまり、イフェクサーSR はSSRIと同等のセロトニントランスポーターへの作用を示すことがPET研究で確認されていました1)。

1)大久保善朗:分子精神医学 10(3): 246-249, 2010.
世界初、うつ病患者を対象とした
ノルアドレナリントランスポーター占有率の測定

本試験では、PETリガンドエフミーナ([18F] FMeNER-D2)を用いて、イフェクサーSRを1日37.5-75mgの低用量群と、1日150-300mgの高用量群の2群に分け、服用量とトランスポーター占有率の関係を検討しました。
なお、対照群の健康成人にはイフェクサーSRは投与していません。
【イフェクサーSRの用法及び用量】
通常、成人にはベンラファキシンとして1日37.5mgを初期用量とし、1週後より1日75mgを1日1回食後に経口投与する。なお、年齢、症状に応じ1日225mgを超えない範囲で適宜増減するが、増量は1週間以上の間隔をあけて1日用量として75mgずつ行うこと。
イフェクサーSRの最終服用時から約5時間後にPET検査を行い、視床のノルアドレナリントランスポーター結合能を測定しています。
Arakawa, R. et al.:Int J Neuropsychopharmacol 22(4):278, 2019[L20190123009]
(本研究はファイザー株式会社の資金により行われた。また本論文の著者のうち2名はファイザー株式会社の社員である。)
ノルアドレナリントランスポーター結合能に
イフェクサーSRの服用が及ぼす影響
対照群では視床に赤い領域が見えるように、ノルアドレナリントランスポーターの高い結合能が観察されます。イフェクサーSR群では、薬剤がトランスポーターへ結合しているためノルアドレナリントランスポーター結合能は低く、青い領域が多くなっています。
Arakawa, R. et al.:Int J Neuropsychopharmacol 22(4):278, 2019[L20190123009]
結合能を数値化したグラフで見ると、PETリガンドエフミーナ([18F] FMeNER-D2)の結合能は、1日150-300mg群のみが、対照群に比較して有意に低くなっていました。
Arakawa, R. et al.:Int J Neuropsychopharmacol 22(4):278, 2019[L20190123009]
イフェクサーSRの服用量と
ノルアドレナリントランスポーター占有率の関係性
本試験では、薬剤を服用していない対照群のノルアドレナリントランスポーター結合能を基準として、イフェクサーSRのノルアドレナリントランスポーター占有率が、服用量によってどのように変化するかについて検討しています。服用量が増えると、ノルアドレナリントランスポーター占有率は、用量依存的に上昇することが示されました。
Arakawa, R. et al.:Int J Neuropsychopharmacol 22(4):278, 2019[L20190123009]
これらの結果を踏まえると、イフェクサーSRは、低用量ではセロトニン系に対してSSRIと同等の作用を示し、高用量では、セロトニン系と共にノルアドレナリン系にも作用する薬剤特性があると言えます。

監修:昭和大学 名誉教授 上島 国利先生
うつ病患者さんを対象とした試験で、イフェクサーSRの薬理学的プロファイルが分子イメージングによって確認できたことは、重要な意義があります。
