Vol.1 指導者の立場から(1)医療者として患者の「社会復帰」を支え、薬剤師として多職種をつなぐ

精神科薬物療法に求められる「人間に対する深い洞察力と感性」

薬剤師の介入で大切な「エビデンス」「個別的な対応」の両側面

定岡 邦夫 

特定医療法人生仁会 須田病院/薬剤部長

名城大学薬学部卒業後、岐阜県の飛騨地域唯一の入院精神医療機関である須田病院(岐阜県高山市、261床)に就職。同じ疾患でも医師ごとに処方格差があり、多剤併用が多いことから薬剤師の視点で多角的に分析、「薬物療法症例検討会」を中心に、他職種との連携の中で、処方の適正化に努めている。2013年からは岐阜県病院薬剤師会飛騨ブロック長として、薬薬連携推進協議会を立ち上げ地域薬剤師会と、さらに医師や行政との関りを含め広く地域医療体制構築の一翼を担っている。2014年に日本病院薬剤師会・精神科専門薬剤師に認定された。全国で認定者数は2020年4月現在46人。

精神科医療において「社会復帰」というキーワードが登場します。この「社会復帰」という言葉の意味ですが、退院だけを意味するものではありません。精神疾患を抱えた患者さんの“全人間的復権”あるいは自尊心を取り戻すまでの過程も含めて「社会復帰」であると定岡氏は考えています。その患者さんが社会復帰できるか否かは、患者家族や職場、あるいは学校、地域といった社会的受け皿に関する要因があり、一方で本人の病状や社会生活力、適応能力など患者側要因との兼ね合いがあります。

定岡氏は薬剤師も含め医療者として、その両側面からアプローチをしていく必要性を指摘します。その上で、病院薬剤師として入退院時の服薬支援、精神疾患以外の身体合併症に対する治療支援など、ジェネラリストとしての役割が求められ、業務の中でもその比重は大きなものがあると語ります。また、デイケアなどで服薬に関わる心理教育、加えて地域薬剤師(会)や各専門職と連携を図りながら患者さんの服薬支援体制を整備しています。すなわち多職種の中でのコーディネーターとしての役割も重要になっていると語ります。

POINT.1

薬剤師の介入で大切な「エビデンス」「個別的な対応」の両側面

POINT.2

検討会や薬薬連携を軸に多剤併用を是正し、処方の適正化を推進