【第3回】「ごちゃごちゃした薬歴になってしまいます」

山本 雄一郎氏I&H株式会社 学術研修部長 / 有限会社アップル薬局 代表取締役 / 熊本大学薬学部 臨床教授


「ごちゃごちゃした薬歴になってしまいます」それがどんな薬歴かといえば、Sがだらだらと長く、Oが処方薬と検査値、Aはやや定型気味で、そしてPには自身が行った服薬指導がいくつも書かれている。そんな感じです。なぜこんなことになってしまうのでしょうか。それはProblem Orientedではないからなのです。

POS(Problem Oriented System ; 問題志向システム)とは、簡単に言えば、プロブレムごとに患者にとってベストなものを求めていくシステムのこと。具体的には、クラスタリングでプロブレムを抽出し、そのプロブレムごとにSOAPといった思考フレームで考えて(記載して)いくことになります(図)。

図1 クラスタリングとSOAPの関係

ここで重要な概念がクラスタリングです。患者から「今日のプロブレムはこれです」とはお話ししてはくれません。患者は思いつくままランダムに話すことがほとんどです。それらを類似度に基づいて頭の中で分けていきます。この作業をクラスタリングといいます。じつは、ごちゃごちゃした薬歴というのは、このクラスタリングがなされていないために起きる現象で、いくつかのプロブレムが一緒くたになっている状態なのです。

「ごちゃごちゃすることもあるけど、うまく書けることもあるんです」それは患者の話のテーマが一つしかない、プロブレムが一つしかないからかもしれません。この場合、クラスタリングは不要ですから、薬歴がごちゃごちゃすることはないでしょう。

クラスタリングをマスターすれば、すっきりした薬歴が書けるようになります。でも、クラスタリングをする目的は、すっきりした薬歴を書くためではありません。クラスタリングをしないとプロブレムが見えてこない、これがクラスタリングを行う本質的な理由です。クラスタリングを怠ると、プロブレムが見えてこなくなる。そして、その表面上の問題として、ごちゃごちゃした薬歴が表れてしまうわけです。

“思考するとは統一することではない、ものごとの現われを、あるひとつの大きな原理という顔つきの下に包みこんで、親しみあるものにしてしまうことではない。思考するとは、見ることを学び直すことであり、意識を向けることであり、心象のひとつひとつをそれぞれの特権的な場たらしめることだ”
―カミュ著 清水徹訳「シーシュポスの神話」新潮文庫,p77,1969より

  • 参考文献 「誰も教えてくれなかった実践薬歴」(山本雄一郎 著/じほう)ごちゃごちゃした薬歴になってしまいます,p42,2018