精神病による初回入院後の長期転帰:症状的,機能的,及びパーソナル・リカバリーとその基準時点における予測因子の21年間にわたる自然経過観察研究

SCHIZOPHR BULL, 48, 631-642, 2022 Long-Term Outcomes of First-Admission Psychosis: A Naturalistic 21-Year Follow-Up Study of Symptomatic, Functional and Personal Recovery and Their Baseline Predictors. Peralta, V., de Jalón, E. G., Moreno-Izco, L., et al.

背景

精神病の長期的な転帰を予測することが求められている。実際,初回エピソード精神病(first-episode psychosis:FEP)の経過と予後は多様であり,症状と機能が完全に回復する場合もあれば,慢性的な経過で心理社会機能が著しく障害される場合もある。

症状的,機能的,及びパーソナル・リカバリーという各領域を抱合する多面的な構成物として回復を検討することは,精神病研究にとって重要な概念の転換であり,基準時点における決定因子の研究と合わせることで,精神病からの回復をより全体的に理解できるかもしれない。本研究の主な目的は次の二点である:①症状的,機能的,及びパーソナル・リカバリーに関する精神病性障害の長期転帰を特徴づけること,②各転帰の領域の基準時点における予測因子を検討すること。

方法

1990年1月~2008年12月の間に,パンプローナ(スペイン)の精神科病棟に入院したFEP患者が対象となった。基準時点で評価を行い,更に2018年1月~2021年5月の間に,精神病性障害の臨床的経過と転帰を評価するために再面談を行った。

症状的リカバリーは,陽性症状評価尺度(SAPS)及び陰性症状評価尺度(SANS)の症状全体評価8項目全てが2点以下で6ヶ月以上維持されていることとした。機能的リカバリーは,社会的職業的機能評定尺度(Social and Occupational Functioning Assessment Scale:SOFAS)評点が61点以上で過去1年間維持されていることとした。パーソナル・リカバリーについては,Questionnaire about the Process of Recovery(QPR)-15の平均的評価に相当する45点以上をカットオフ値とした。

結果

623名の患者に面談を行った。510名が研究に参加し,そのうち243名の追跡に成功した。追跡期間の中央値は21年(四分位範囲18~24),追跡できた群とできなかった群における違いは年齢だけで,追跡できた群の方が低かった。

症状的,機能的,及びパーソナル・リカバリーをした患者数は,それぞれ126名(51.9%),128名(52.7%),126名(51.9%)であった。172名(74.2%)が少なくとも一つ,108名(44.4%)が症状的と機能的リカバリーの両方,そして79名(32.5%)が全てのリカバリーの基準を満たしていた。

階層型多変量Cox回帰分析では,症状的リカバリーに対して9因子,機能的リカバリーに対して8因子,そしてパーソナル・リカバリーについて7因子の独立した予測因子が明らかにされた。各リカバリー領域に共通する因子は,両親の社会・経済的状況,統合失調症スペクトラム障害の家族歴がないこと,発達の遅れ,小児期の逆境と薬物使用であった。

考察

本研究は,長期間の追跡により評価された三つのリカバリー領域に対する基準時点での予測因子に関する,これまでで最も完全な分析であり,過去の観察研究と比べて以下の点で進歩していた。まず,本研究は,長期間の追跡調査における症状的,機能的,及びパーソナル・リカバリーの割合と関係性についての理解を深めた。次に,基準時点における包括的かつ標準化された評価により,多様な背景やその後のリカバリー状態に対するFEPの予測因子の候補を調べることができ,各リカバリー領域の共通及び固有の決定因子を特定できた。また,小児期の逆境体験や発症前の認知予備能など,長期間追跡における基準時点の予測因子として初めて評価された因子も含まれていた。最後に,転帰は基準時点の予測因子に対して盲検的に評価された。まとめると,本研究は精神病性障害の長期転帰に対する基準時点での予測因子に関して,既存の文献に有意義な情報を追加するものである。

2022年8月 [no.4(256号)]

(上野 文彦)

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