臨床試験における治療抵抗性うつ病の定義に関するデルファイ法に基づくコンセンサスガイドライン

MOL PSYCHIATRY, 27, 1286-1299, 2022 A Delphi-Method-Based Consensus Guideline for Definition of Treatment-Resistant Depression for Clinical Trials. Sforzini, L., Worrell, C., Kose, M., et al.

目的

うつ病(MDD)の亜型である治療抵抗性うつ病(TRD)と部分反応性うつ病(PRD)の基準は,明確に定義されていない。本研究の具体的な目的は,①現在臨床で日常的に収集されている情報を用いて,個人を中心としたレベルで使用できるTRDとPRDの定義を提供すること,②TRDとPRDに関する今後の調査や臨床試験に含めるべき測定尺度や診断機器を推奨すること,③更なる研究が必要な重要な分野はどれかを示すこと,である。

方法

デルファイ法は,健康に関する研究においてガイドラインを作成する際に選択される方法である。著者らは,コンセンサスを正確な推奨に対する同意(対不同意)の割合として明確に定義し,更にこの割合が95%以上である場合を強いコンセンサス,61~94%の場合を中程度のコンセンサス,51~60%の場合を弱いコンセンサスと定義した。

結果

最も多くの専門家に支持された見解に基づいて,多くの推奨事項を提供した。一方で,不確実な領域を強調し,各推奨事項に関する「コンセンサスのレベル」を定義した。「強い」は,満場一致またはほぼ満場一致(95%以上)の合意を得た推奨事項の上位3分の1を示しており,「中程度」は,かなりの多数(61~94%)を得た残りのほぼ全ての3分の2の推奨事項を示しており,「弱い」は,最低合意率51%にしか達しない1件の推奨事項を示している。TRD及びPRDを研究に含めるためのアルゴリズムを図に示す。著者らは次のことを提示する。①強いコンセンサスの得られた推奨は直ちに採用されるべきであること,②中程度のコンセンサスの得られた推奨は,直ちに実施するための作業モデルを提供できるが,将来の研究/議論によって更に確認する必要があること,③弱いコンセンサスの推奨は,不確実な領域を示しており,更なる研究あるいは議論が必要であること。

結論

推奨には堅固で客観的な妥当性を欠いている,TRD/PRDサンプルに表現型や生物学的な異質性が認められる可能性,今回の結果がより大きな集団には一般化できないかもしれない,などの限界があるにもかかわらず,本報告は,臨床医,研究者,企業,規制当局,当事者を含む多くの専門家の間で合意された,規制の臨床試験及びより広範な臨床・生物学研究のための明確かつ一貫したTRD及びPRDの定義を提供している。

図.TRD及びPRDを研究に含めるためのアルゴリズム
図.TRD及びPRDを研究に含めるためのアルゴリズム(つづき)

256号(No.4)2022年10月14日公開

(大谷 洋平)

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