成人のうつ病患者の治療予後に関する社会経済的指標:系統的レビューと個別患者データのメタ解析

JAMA PSYCHIATRY, 79, 406-416, 2022 Socioeconomic Indicators of Treatment Prognosis for Adults With Depression: A Systematic Review and Individual Patient Data Meta-analysis. Buckman, J. E. J., Saunders, R., Stott, J., et al.

背景

社会経済的な因子は,うつ病の有病率の上昇と関連しているが,予後との関連はほとんど調査されていない。本研究では,①プライマリーケアにおける成人のうつ病患者の予後と社会経済的因子(雇用状況,経済的負担,住居状況,教育水準)との関連を,治療とは別に検討し,②他の既知の予後因子を考慮した上で,これらの因子が予後に関する知識を深めるかどうかを検討することを目的とした。

方法

2021年10月8日までの期間,Embase,International Pharmaceutical Abstracts,MEDLINE,PsycINFO,Cochrane(CENTRAL)で全件検索を実施した。16歳以上の単極性うつ病患者を対象とした無作為臨床試験で,少なくとも一つの実薬群を設けており,少なくとも一つの社会経済的因子を評価し,基準時点で臨床インタビュースケジュール改訂版(Revised Clinical Interview Schedule:CIS-R)を用いて抑うつ・不安症状及び慢性度の測定と診断を行っている研究の参加者の個人データを検索した。また,うつ病の治療を希望し,CIS-R評点が12点以上であった患者の研究,またはプライマリーケアから募集された患者の研究からの個人データも含めた。

結果

本系統的レビュー及びメタ解析では,組み入れ基準に合致した研究が9報確認され,4,864名の患者[平均(標準偏差)年齢42.5(14.0)歳,女性3,279名(67.4%),男性1,583名(32.6%)]の個人データが得られた。

3~4ヶ月後の抑うつ症状評点は,治療とは無関係に,無職の患者の方が有職の患者より47.3%[95%信頼区間(CI):38.4-56.8%]高かった。また,経済的に苦しい患者では,経済的に問題がない患者に比べて抑うつ症状評点が30.2%(95%CI:18.5-43.2%)高く,予後が悪くなることがわかった

3~4ヶ月後の時点で,持ち家に住む患者と比べ,借家に住む患者,及びその他の住居形態をとる患者の抑うつ症状評点はそれぞれ,25.8%(95%CI:18.1-34.0%),35.0%(95%CI:16.9-56.0%)高く,予後が悪かった。この関係は,うつ病性障害の特性で調整すると弱くなり(借家で12.8%,95%CI:6.2-19.9%;その他の住居形態で22.2%,95%CI:9.0-37.1%),雇用状況で調整するとまた弱くなったが(借家で9.5%,95%CI:2.2-17.4%;その他の居住形態で17.6%,95%CI:6.4-30.0%),その他の住居形態をとる患者の予後は依然としてかなり悪かった。

教育水準が学士未満である患者は,高学歴(学士以上)の患者よりも3~4ヶ月後の抑うつ症状評点が6.5%(95%CI:2.1-11.1%)高く,予後が悪かったが,他の予後因子で調整した後ではそうではなかった(1.0%,95%CI:-3.2-5.5%)。

結論

患者の就職や雇用の維持,安定した住居の確保を支援する介入は,生活の質,機能,抑うつ症状の改善に有効であるとされている。COVID-19の大流行が雇用や住宅に影響を及ぼし,脆弱性が増すことが懸念される現在,これは特に重要なことかもしれない。

256号(No.4)2022年10月14日公開

(グナリディス 愛)

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