第1回 双極性障害の治療課題とラツーダの使い方

双極性障害の治療課題とラツーダの使い方

監修:順天堂大学医学部 精神医学講座
   主任教授 加藤 忠史先生

「双極性障害の治療課題とラツーダの使い方」をテーマにこれまでに多く寄せられたご質問に関して、順天堂大学医学部 精神医学講座 主任教授 加藤 忠史先生よりご解説いただきました。

1.双極性障害の課題

まずは双極性障害の課題について、改めて教えていただけますでしょうか。

加藤先生

双極性障害の課題の一つに、高い再発率があげられます。海外の報告では、1年以内の再発が57%、5年以内の再発が91%と高い再発率が示されています。また、双極性障害患者さんの自殺率は、一般人口に比べて高いことも知られています。しかし、実際の双極性障害患者さんの死因は心血管系疾患が多いということも報告されています(図1)。

図1

2.双極性障害におけるうつ症状の改善の重要性

双極性障害治療における抑うつ症状の位置付けを教えてください。

加藤先生

図2は、双極性障害の経過中に各症状及び寛解が占める割合を示した図になりますが、双極Ⅰ型障害では31.9%、双極Ⅱ型障害では50.3%の期間を抑うつ症状が占めていました。このように、双極性障害は抑うつ症状が長い期間を占めているため、治療では、いかにして経過を不安定化させずに抑うつ症状を改善させるかが重要になります。

図1

3.双極性障害の治療の変遷とラツーダの特徴

以前は気分安定薬しかなかったところ、双極性障害に対する保険適用を持つ非定型抗精神病薬が登場し、2020年に抗精神病薬ラツーダが双極性障害うつ症状の改善薬として発売されました(図3)。 改めて、ラツーダの特徴を教えていただけますでしょうか。

加藤先生

ラツーダは、SDA(Serotonin Dopamine Antagonist)の特徴であるセロトニン5-HT2A、ドパミンD2受容体に対しアンタゴニストとして作用します。加えて、気分症状改善や認知機能改善効果を示す可能性のあるセロトニン5-HT7受容体に対してアンタゴニストとして、セロトニン5-HT1A受容体に対してはパーシャルアゴニストとして作用します。一方、過鎮静、食欲亢進、体重増加などに関与するヒスタミンH1受容体や、口内乾燥、便秘、尿閉などに関与するムスカリンM1受容体には、Ki値が1,000nM以上とほとんど作用しません(図4)。

アンメットニーズが多い双極性障害うつ症状の治療に新たな薬剤としてラツーダが加わったわけですが、適切に使用しないと効果が発揮されないことが懸念されます。どのように使ったら良いでしょうか。

加藤先生

そこが大切なポイントですのでこれから解説します。まずは、添付文書を見てみたいと思います。

ラツーダは、「双極性障害におけるうつ症状の改善」においては、「通常、成人にはルラシドン塩酸塩として20~60mgを1日1回食後経口投与する。なお、開始用量は20mg、増量幅は1日量として20mgとし、年齢、症状により適宜増減するが、1日量は60mgを超えないこと」となっています(図5)。

この解説は次の「4.国際共同第3相試験(ELEVATE試験):検証的試験」に続きます。

4.国際共同第3相試験(ELEVATE試験):検証的試験

加藤先生

続いて、双極性障害うつ症状の改善の適応症を取得する根拠となった国際共同第3相試験「ELEVATE試験」を見ていきましょう。
本試験は双極Ⅰ型障害患者(大うつ病エピソード)525例を対象に実施されました(図6,7)。

実際の臨床試験での投与量を見てみますと、ラツーダの最頻投与量が20mg/日だった患者さんは37.5%、40mg/日は22.8%、60mg/日は39.7%でした。また、平均投与量は36.0mgでした。最終投与量は、20mg/日だった患者さんは26.3%、40mg/日は20.6%、60mg/日は53.1%でした(図8)。

加藤先生

主要評価項目である6週時のMADRS合計スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ群−10.6、ラツーダ20-60mg群−13.6、投与群間の差−2.9と、ラツーダ20-60mgはプラセボに比べてMADRS合計スコアを有意に低下させ、プラセボに対する優越性が検証されました(図9左)。
また、副次評価項目である各評価時点のベースラインからの変化量は、ラツーダ20-60mg群では投与開始2週目よりプラセボと比べ有意な改善が認められました(図9右)。

6週時のMADRS項目別スコアのベースラインからの変化量をお示しします。うつ症状の中核症状である「外見に表出される悲しみ」や「言葉で表現された悲しみ」など、各項目のスコア変化量は図10に示すとおりです。

安全性

安全性について教えてください。

加藤先生

副作用発現率は、プラセボ群55例(32.0%)、ラツーダ20-60mg群71例(38.6%)、ラツーダ80-120mg群87例(51.5%)でした。
発現頻度5%以上の副作用は、プラセボ群ではアカシジア11例(6.4%)、悪心8例(4.7%)、ラツーダ20-60mg群ではそれぞれ24例(13.0%)、12例(6.5%)、ラツーダ80-120mg群ではそれぞれ38例(22.5%)、18例(10.7%)などでした(図11)。
重篤な副作用は、プラセボ群1例1件[躁病1件]、ラツーダ20-60mg群0例、ラツーダ80-120mg群2例2件[自殺企図、パニック発作各1件]に認められました。
投与中止に至った有害事象は、プラセボ群7例[好中球減少症、急性心筋梗塞、胃炎、悪心、嘔吐、疾患進行、アカシジア各1例]、ラツーダ20-60mg群6例[嘔吐、機能性胃腸障害、肝障害、アカシジア、躁病、自殺念慮各1例]、ラツーダ80-120mg群16例[悪心4例、疾患進行、アカシジア各3例、嘔吐、腱断裂、筋骨格硬直、ジストニア、不眠症、呼吸困難各1例]に認められました。
試験期間中、いずれの群においても死亡は報告されませんでした。

本試験では臨床検査値への影響も検討されています。6週時の体重のベースラインからの変化量は、プラセボ群−0.22kg、ラツーダ20-60mg群0.23kg、ラツーダ80-120mg群0.22kgでした(図12)。

図11

図12

5.ラツーダの使い方のコツ

ラツーダの使い方のコツを教えてください。

加藤先生

今まで臨床試験の結果を見てきましたが、どのような用量で投与されていたかを改めて見てみましょう。
ELEVATE試験では、先ほど示した通りラツーダの最頻投与量が20mg/日だった患者さんは37.5%、40mg/日は22.8%、60mg/日は39.7%でした。また、平均投与量は36.0mgでした。最終投与量は、20mg/日だった患者さんは26.3%、40mg/日は20.6%、60mg/日は53.1%でした(図13)。
重要なことは、ラツーダの至適用量は患者さんごとに異なりますので、20mgから投与を開始し、忍容性・安全性に問題がなければ20mgずつ増量して効果を確認していくことだと考えています。

図13

ラツーダ錠20mg/錠40mg/錠60mg/錠80mgの製品基本情報(適正使用情報など)

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