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【第1回】薬剤師による問診について
遠藤 一司氏日本臨床腫瘍薬学会 / 顧問
薬剤師の勤務先はとても広範囲で、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計(平成30年)」※1によると、薬剤師の従事先として薬局58%、病院・診療所19%、医薬品企業13%、大学1.7%、衛生行政機関2.1%、介護施設0.3%などとなっています。我が国の薬剤師およそ31万人のうち18万人が薬局に勤務していることになります。多くの国民にとっての薬剤師のイメージは薬局で働く薬剤師になるのかもしれません。

出典:厚生労働省「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
私が病院に勤務したての頃は、業務のほとんどが調剤に振り向けられていました。待合室にあふれる外来患者のための調剤と入院患者のための調剤が主な業務でした。分業率が10%程度の1988年以降、いわゆる服薬指導が入院患者に行われるようになりました。
その後の1999年、2000年に日本病院薬剤師会が「薬剤管理指導業務完全実施推進大会」を開催することで推進を図っていました。病院において薬剤師が他の医療者や患者のそばで仕事をするのは、薬剤師の病棟常駐を評価した「病棟薬剤業務実施加算」が設けられた2012年頃から、調剤室以外で薬剤師の業務を行う機会が格段に多くなったと思います。
薬剤師会や行政の努力により分業の意義の理解が進み、多くの処方箋が病院や医院から発行され、今や患者は薬局から薬を受け取ることが当たり前になり、薬局の薬剤師による患者への服薬指導が行われています。
薬局に処方箋を持参した際にどの薬局でも変わらぬ光景があります。初めての時にバインダーに挟んだ質問用紙とボールペンを渡され、事務員と思われる人から記入するように言われることです。質問用紙には、アレルギーはあるか、副作用の経験はあるか、他院でもらっている薬は何か、ジェネリックを希望するかなどの質問が書かれており、それぞれに答えるようになっています。妊娠や授乳を聞いているもの、飲酒や喫煙を聞いているものもあったように思います。
初回患者への問診はとても重要なもので、調剤や患者指導にはなくてはならないものです。私の疑問は、とても重要な患者情報を得るための問診を、なぜ1枚の紙で済ませてしまうのか。なぜ薬剤師が直接、患者と話をしないのかということです。お薬を渡されるとき、問診票に記載したことで後発品以外のことを聞かれた経験はほとんどありません。
薬剤師が患者からさまざまなことを聴く力を発揮することで、とても重要な、もっと深い情報が得られると思うのですが、いかがでしょうか。
- 厚生労働省「平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」