薬物動態から考えるブロナンセリンの進化 -テープ剤が臨床にもたらすものとは-

薬物動態から考えるブロナンセリンの進化 -テープ剤が臨床にもたらすものとは-

【監修】

東京慈恵会医科大学 精神医学講座 客員教授/医療法人社団光生会平川病院 副院長
宮田 久嗣 先生

宮田久嗣先生

今回は、薬物動態の観点からロナセンテープの有用性を、東京慈恵会医科大学 精神医学講座 客員教授/医療法人社団光生会平川病院 副院長 宮田久嗣先生に解説いただきました。

抗精神病薬では世界初のテープ剤であるロナセンテープが本邦で発売して6年が経とうとしています。このロナセンテープが統合失調症治療に何をもたらしたのか。ブロナンセリンがテープ剤となったことで、どのような臨床価値を生み出したのか、一緒に考えていきましょう。

ロナセン錠の薬理プロファイルと臨床での限界

ブロナンセリンは、ドパミンD2受容体、ドパミンD3受容体およびセロトニン5-HT2A受容体に選択的な受容体親和性を有しています。一方、眠気、体重増加、糖代謝異常、認知機能障害などの副作用に関与するアドレナリンα1やヒスタミンH1、セロトニン5-HT2C、ムスカリンM1・M3受容体に対する親和性は低いです。これらのことから、ブロナンセリンは急性期治療だけでなく、地域生活を目指す外来治療でも活用できる薬理プロファイルを持った薬剤と考えています。

ただ、経口投与のロナセン錠は次のような限界を臨床で感じることもありました。

ロナセン錠の限界


  • ・1日2回の投与
  • ・食後投与(食後以外では薬物吸収量が低下する)
  • ・錐体外路症状で困ることがある

薬物動態を考慮した抗精神病薬の選択

薬剤の有用性を考える場合、薬理プロファイルだけでなく、薬物動態も考慮することが重要です。同じ成分でも、投与経路が変わることで治療効果や有害事象の発現率が異なる可能性があります。一般的にテープ剤は、消化管を通らず全身血行、そして脳内へ移行するため次のような臨床上のメリットがあると考えています。

テープ剤の臨床上のメリット


  • ・有効血中濃度が維持され、安定した効果と血中濃度の変動による副作用の軽減が期待できる
  • ・食事の影響を受けないため、急な投薬にも対応が可能
  • ・初回通過効果を受けないため、有用性の個人差が少ない可能性がある。

薬物動態の観点でロナセン錠とロナセンテープを考える

ここでロナセン錠とロナセンテープを薬物動態の観点で比べてみます。薬理プロファイルが同じでも、このように薬物動態が異なることから、有用性も異なると想像します。

血中濃度 ロナセンテープのほうが安定する
線条体ドパミンD2受容体占有率 ロナセンテープのほうが日内変動が小さい
食事の影響 ロナセンテープは食事の影響を受けない(ロナセン錠は食後投与)
初回通過効果(肝臓での代謝) ロナセンテープは初回通過効果を受けない

先生 私が考えるロナセンテープの処方を検討する患者像

宮田 久嗣先生
・症状が不安定で不穏状態の患者さん
・ロナセン錠による錐体外路症状で困っている患者さん


血中濃度安定のメリットは、他にもドパミン過感受性精神病(DSP)への進展抑制につながることも期待できます。薬物動態も考慮した統合失調症薬物治療を行うことで、患者さんのより良い未来を目指していきましょう。

急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)

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急性期統合失調症患者さんに対する、ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。

ロナセンテープ20mg/テープ30mg/テープ40mgの製品基本情報(適正使用情報など)

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