急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)


社内資料:国際共同第3相試験【承認時評価資料】、Iwata N. et al.:Schizophr. Res., 215:408, 2020
本研究は大日本住友製薬株式会社(現:住友ファーマ株式会社)の資金により行われた。また、本論文の著者のうち4名は同社の社員である。
また著者に大日本住友製薬株式会社(現:住友ファーマ株式会社)より講演料、原稿料を受領しているものが含まれる。

試験概要

タイトル

ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験

目的

〔主要目的〕
統合失調症患者にロナセンテープを40mg/日または80mg/日で貼付したときの有効性を、6週時でのベースライン※1からのPANSS合計スコア変化量を主要評価項目としてプラセボと比較する。

※1:二重盲検治療期の開始時

〔副次目的〕
統合失調症患者にロナセンテープを6週間貼付したときの安全性をプラセボと比較する。また、ロナセンテープを長期貼付したときの安全性および有効性を検討する。

対象

統合失調症患者※2 580例(プラセボ群;190例、40mg群;196例、80mg群;194例)

※2:DSM-5の診断基準により診断

選択基準;妄想など何らかの統合失調症に伴う精神症状が2ヵ月(60日)以内に悪化した患者/PANSS評価で、妄想(P1)、概念の統合障害(P2)、幻覚による行動(P3)、猜疑心(P6)、不自然な思考内容(G9)の5項目のうち2項目以上が4(中等度)以上の患者/PANSS合計スコアが80以上の患者 など

6.用法及び用量
通常、成人にはブロナンセリンとして40mgを1日1回貼付するが、患者の状態に応じて最大80mgを1日1回貼付することもできる。
なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は80mgを超えないこと。
本剤は、胸部、腹部、背部のいずれかに貼付し、24時間ごとに貼り替える。

試験デザイン

多施設国際共同試験(日本を含む8ヵ国)。二重盲検治療期はプラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較(固定用量)、非盲検治療期は無対照非盲検(適宜増減)

評価項目

有効性

    〔主要評価項目〕

  • 6週時でのベースラインからのPANSS合計スコア変化量
  • 〔副次評価項目〕

  • 6週時でのベースラインからの各スコアの変化量
    ① PANSS尺度別合計スコア、②PANSS 5因子モデル別合計スコア、③CGI-Sスコア
  • 6週時でのPANSS responder(PANSS合計スコアがベースラインに比べ20%以上改善した患者)の割合
  • ロナセンテープ貼付期間中におけるベースライン※1 からの各スコアの変化量
    ①PANSS合計スコア、②PANSS尺度別合計スコア、③PANSS 5因子モデル別合計スコア、④CGI-Sスコア

    ※1:プラセボ to Flex dose群は非盲検治療期の開始時、40mg/80mg to Flex dose群は二重盲検治療期の開始時

  • 非盲検治療期におけるロナセンテープ貼付期間

安全性

  • 有害事象および副作用
  • 錐体外路系/貼付箇所の皮膚関連の有害事象および副作用
  • 貼付箇所の皮膚関連有害事象および副作用
  • 貼付箇所の皮膚刺激性評価
  • 6週時でのベースラインからのDIEPSS合計スコア変化量(総括重症度を除く)
  • 6週時でのベースラインからのDIEPSS症状別スコア変化
  • ロナセンテープ貼付期間中のベースライン※1からのDIEPSS合計スコア変化量(概括重症度を除く)
  • ロナセンテープ貼付期間中のベースライン※1からのDIEPSS症状別スコア変化量

    ※1:プラセボ to Flex dose群は非盲検治療期の開始時、40mg/80mg to Flex dose群は二重盲検治療期の開始時

  • 血清プロラクチン濃度
  • 心電図パラメータ(QTc)
  • 抗パーキン ソン薬の併用
  • C-SSRSを用いた自殺に関する調査
  • 臨床検査値、バイタルサインおよび体重

薬物動態

  • 血漿中ブロナンセリン濃度
  • 血漿中代謝物M-1(N-脱エチル体)濃度

解析計画

  • 主要な解析はmITT集団を対象に実施する
  • mITT集団は、ランダム化され、二重盲検治療期に試験薬を1回以上貼付し、かつPANSS合計スコアのベースラインと二重盲検治療期の試験薬貼付後の両方の値がある患者集団とする
  • 有効性の主要評価項目は、6週時のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量とし、プラセボ群に対するロナセンテープ(40および80mg/日)群の優越性を検証する
  • 主要な解析ではMMRMを用い、共変量として治療群、評価時期、実施医療機関、PANSS合計スコアのベースライン、および治療群と評価時期の交互作用を含める
  • 患者内の相関にはUnstructured共分散行列を用いる
  • 欠測値の補完は行わない
  • 主要な有効性の解析では、複数のロナセンテープ群とプラセボ群を比較する検定の多重性を考慮し、全体の第一種の過誤確率を5%にするためにHochbergの方法を用いる
  • 各評価時点(1週・2週・4週・6週時)でのベースラインからのPANSS項目スコア変化量をWilcoxonの符号順位検定を用いて検討する
  • 安全性の解析は安全性解析対象集団を対象に実施する
  • ロナセンテープ貼付期間の有効性および安全性の解析は、ロナセンテープ貼付集団を対象に実施する

試験方法

  • 観察期は1週間(最短3日間)とし、単盲検下でプラセボを1日1回貼付し、この間に20%以上のPANSS合計スコアの低下を示さなかった患者はロナセンテープ40mg/日群、80mg/日群、プラセボ群のいずれかに割り当てられました
  • この時点のPANSSスコアがベースラインとなり、二重盲検治療期が終了した6週時でのスコアとの変化量を主要評価項目としています

選択基準

スクリーニング時の選択基準

スクリーニング時に下記のすべての基準を満たす患者としました。

  • DSM-5の診断基準により統合失調症と診断された患者
  • 妄想など何らかの統合失調症に伴う精神症状が2ヵ月以内に悪化した患者
  • PANSS評価で、妄想(P1)、概念の統合障害(P2)、幻覚による行動(P3)、猜疑心(P6)、不自然な思考内容(G9)の5項目うち2項目以上が4(中等度)以上の患者
  • PANSS合計スコアが80以上の患者
  • スクリーニング時から二重盲検治療期のDay 14まで入院可能な患者
  • 同意取得時の年齢が18歳以上の患者
  • 本治験の目的・内容、予測される薬効・薬理作用および危険性などについて十分説明を受け、理解が得られた者で、本人からの自由意思による同意を文書で得られた患者。同意取得時の年齢が20歳未満の場合、および日本では患者が医療保護入院している場合は、本人からの同意に加え代諾者からも文書による同意が得られた患者。

    ※:両者の生活の実質や精神的共同関係から見て、被験者の最善の利益を図りうる者で、原則として2親等以内の者としました。

  • 妊娠可能な閉経前の女性の場合は、スクリーニング時の妊娠検査(尿)が陰性の患者
  • 本人または女性パートナーが妊娠可能な場合、本人または女性パートナーが妊娠しないよう適切に避妊することに同意した患者

DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, fifth edition
PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale

除外基準

スクリーニング時の除外基準

スクリーニング時に下記のいずれかに該当する場合、本治験から除外しました。

  • 昏睡状態の患者
  • バルビツール酸誘導体などの中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者
  • アドレナリン、アゾール系抗真菌剤(外用剤を除く)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼ阻害剤を投与中の患者
  • 悪性症候群、遅発性ジスキネジア、水中毒の合併または既往歴がある患者
  • パーキンソン病の患者
  • 自殺念慮を有する患者、あるいは自殺企図の既往があり治験責任医師または治験分担医師が本治験の対象として不適当と判断した患者
  • HbA1c値(NGSP値)が8.4%以上の患者
  • 脱水・栄養不良状態などを伴う身体的疲弊のある患者
  • 重篤な心血管系疾患、肝疾患、腎疾患、脳器質性疾患、血液疾患、内分泌疾患、痙攣性疾患などの合併症を有する患者、あるいはこれらの既往があり治験責任医師または治験分担医師が本治験の対象として不適当と判断した患者
  • 貼付部位(背部、胸部または腹部)に皮膚の損傷、疾患または入れ墨があり、十分な貼付箇所が確保できない患者
  • スクリーニング時の前6ヵ月以内に、薬物乱用または薬物依存歴、アルコール乱用またはアルコール依存歴のある患者
  • スクリーニング時の前3ヵ月以内に抗精神病薬のデポ剤(持続性製剤)の投与を受けた患者
  • スクリーニング時の前4ヵ月以内にクロザピンの投与を受けた患者
  • スクリーニング時の前1年以内に3種類以上の抗精神病薬に対して効果不十分と判断された患者
  • ブロナンセリンの投与を受けたことのある患者
  • スクリーニング時の前1ヵ月以内にモノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤またはフルオキセチンを投与された患者
  • スクリーニング時の前6ヵ月以内に電気痙攣療法を受けた患者
  • 妊婦または授乳中の患者
  • 2種類以上の薬剤に対して、薬剤アレルギーの既往または合併のある患者(薬剤が原因のアナフィラキシー、発疹および蕁麻疹などのアレルギー反応の既往または合併のある患者)
  • スクリーニング時の前5年以内に悪性腫瘍の既往歴または合併症がある患者
  • HIVに感染している患者
  • スクリーニング時の前3 ヵ月以内に他の治験薬または製造販売後臨床試験薬の投与を受けていた患者、スクリーニング時の前までに他の治験または製造販売後臨床試験が終了していない患者
  • 治験責任医師または治験分担医師が本治験の対象として不適当と判断した患者

ロナセンテープ20mg/テープ30mg/テープ40mgの製品基本情報(適正使用情報など)