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急性期統合失調症患者に対するblonanserin経皮吸収型製剤の有用性検討
堤祐一郎ほか. : 臨床精神薬理, 27 (11) : 1235-1248, 2024
本論文の著者に住友ファーマ株式会社より講演料を受領しているものが含まれている。
※本データは使用実態調査に基づくエビデンス(後ろ向き研究)であるため、ロナセンテープの有効性・安全性については、国際共同第3相試験(検証的試験)もご参照ください。
試験概要
目的
急性期統合失調症患者に対するロナセンテープの有用性を後方視的に調査する。
対象
2019年9月〜2023年12月の間に恩方病院精神科に入院し、主治医判断によりロナセンテープが定められた用法用量どおりに貼付された急性期統合失調症患者(ICD-10、F20)30例
試験デザイン
後ろ向き研究
評価項目
有効性
- PANSS-EC合計スコア
[主要評価項目]
- PANSS-EC下位項目(興奮、敵意、緊張、非協調性および衝動性の調節障害)、PANSS幻覚、妄想、CGI-S、ロナセンテープ用量とPANSS-EC合計スコアおよびCGI-Sスコアの関係、併用薬の有無とロナセンテープ中止・脱落の有無の関係
[副次評価項目]
安全性
- 調査期間中に観察された副作用・有害事象とその転帰、治療中断理由、ロナセンテープ治療継続率
解析方法
[主要評価項目]
- PANSS-EC合計スコアについて統計量を求め、ロナセンテープ貼付開始日のスコアと貼付開始24時間以内、第7病日、第14病日のスコアをWilcoxon符号順位検定で比較した。なお、多重比較の補正にはBonferroni法を用いた。欠損値の補完は行わず貼付14日後もしくは中止・脱落時スコアを最終評価時とし、統計学的有意水準はp<0.05とした。
[副次評価項目]
- 主要評価項目と同様の方法で比較した。ロナセンテープの用量設定とPANSS-EC合計スコアおよびCGI-Sスコアの関係についてはWilcoxon順位検定を用いて、併用薬の有無とロナセンテープ中止・脱落の有無の関係についてはFisherの正確確率検定を用いてそれぞれ解析した。統計学的有意水準はp<0.05とした。
Limitation
- 本調査は単一施設で治療された患者を後方視的に解析したデータであること、比較対照群を設定した研究デザインでないこと、症例数が少なく観察期間が14日間であり、急性期以降の慢性期に至る長期の有効性、安全性については言及できない。
患者背景
- 評価対象30例の内訳は男性12例、女性18例で、平均年齢は50.1歳でした。
- エピソードは、再発・再燃例_5回以上が15例、5回未満が9例であり、80%の患者が再発・再燃を経験していました。
- 精神科治療歴は10年以上が17例、10年未満が3例、不明が10例でした。
- 精神保健福祉法における入院形態は措置入院が7例、医療保護入院が18例、任意入院が5例であり、約80%が非同意入院(措置+医療保護入院)でした。
- ベースラインの重症度ですが、PANSS-EC合計スコアの中央値は23.5、PANSS-EC下位5項目は興奮が4、敵意が5、緊張が5、非協調性が5、衝動性が5であり、中等度~やや重度の範囲でした。
- PANSS幻覚は5(やや重度)、妄想は6(重度)でした。
- CGI-Sも6と重症であることがわかります。
- 前治療薬(抗精神病薬)は、「あり」が20例であり、約65%の患者で(ロナセンテープ貼付前の)抗精神病薬による治療が確認されています。
PANSS-EC合計スコア変化量と推移
- PANSS-EC合計スコアの変化量は、貼付開始時の23.5から第14病日には14.5へ有意な改善を示しました。
- スコアの推移をみると貼付24時間以内では有意なスコア変化は認められませんでしたが、第7病日、第14病日では経時的にスコアは有意に低下しました。
ロナセンテープ平均投与量推移
- 調査期間中のロナセンテープの平均投与量は、投与開始時 54.0mg/日、第7病日 62.1mg/日、第14病日 65.0mg/日でした。
- 30例のうち10例は80mg (40mg×2枚貼付)で治療が開始されており、8例は治療開始後1週間以内に80mgへ増量されていました。
PANSS-EC下位項目の推移
- PANSS-EC下位項目のスコアは貼付開始時は4~5でしたが、第7病日、第14病日といずれの項目においても経時的に有意に低下しました。
PANSS幻覚・妄想、CGI-Sの推移
- PANSS-EC幻覚・妄想およびCGI-Sスコアは、第7病日、第14病日と経時的に有意に低下しました。
副作用・有害事象
- ロナセンテープ貼付前の時点で昏迷状態、亜昏迷状態、ジスキネジア各1例を認め、貼付後は、アカシジア、貼付部位のかぶれ各1例、皮膚掻痒症3例を新たに認めました。
- 貼付前にすでに亜昏迷状態であった患者1例は、ロナセンテープを自己抜去したため1日で中止していました。
- ジスキネジアを発現していた患者は14日間の調査期間中ロナセンテープの貼付が継続されていました。
- 皮膚掻痒症のうち1例はロナセンテープ貼付を中止していました。
- ロナセンテープに起因するEPSの発現は、30例中1例のアカシジアでした。
- なお、調査期間中の抗パーキンソン薬の併用はありませんでした。
継続率と中止理由
- ロナセンテープが貼付された30例のうち「あらゆる理由による貼付中止」は6例であり、14日後の継続率は80%(中止6例/継続24例)でした。
ロナセンテープ開始用量とPANSS-EC合計スコア、CGI-Sスコアの関係
- 開始時ロナセンテープ40mgが貼付されその後観察期間中用量が一定だった12例と開始時80mg貼付および40mg貼付後1週間以内に80mg増量されていた18例の開始時PANSS-EC合計スコア、CGI-Sスコアを比較したところ、両スコアとも80mgが貼付された18例の方が有意に高いことが認められました。
- PANSS-EC合計スコアおよびCGI-Sスコアで表される疾患重症度が高い患者さんほど80mgが貼付されていました。
併用薬の有無と中止・脱落への影響
- 補助薬併用および抗精神病薬併用の有無は、ロナセンテープの中止・脱落に影響するとの結果は認められませんでした。
Expert’s Comment
- 本調査では非同意入院が約80%を占めていましたが、昏迷・亜昏迷状態を除く28名の患者さんは体幹部へのロナセンテープ貼付に了解を示しました。また昏迷・亜昏迷状態の2名の患者さんは疎通性に欠けるためロナセンテープ貼付を家族に説明し貼付しました。
急性期統合失調症治療におけるロナセンテープの有効性と安全性:国際共同第3相試験(検証的試験)
急性期統合失調症患者さんに対する、ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。










