臨床経験から考える ゼプリオン/ゼプリオンTRIが 患者さんにもたらすものとは
監修:医療法人社団玉藻会 馬場病院
副院長 渡邉佑一郎先生
施設紹介
1959年(昭和34年)開設。高松市の中心地に位置する精神科病院であり、病床数は香川県内最多。断らないことを一つの主義として相談があればどんな患者さんでも受け入れている。2024年4月からは精神科救急入院料病棟が稼働し、軽症から重症まで、老若男女も含めてさまざまな精神疾患に対応できるように万全を期す。入院患者さんのうち統合失調症の患者さんは全体の4割ほどを占める。
統合失調症の治療方針
目の前の患者さんの症状をなるべく早く改善することはもちろんですが、症状が改善した後も治療を続けて安定した生活が送れることを見据えて治療方針を考えています。具体的には、主剤は精神症状への効果が期待でき、かつ副作用が少ない薬を選び、鎮静系の薬剤は必要な時だけ使用しています。患者さんの希望も尊重して、話ができるようになったら辛かったときのことも含めてしっかり聞き、良くなった後にどんな生活を送りたいのか話をするようにしています。 私は精神科医になってからずっと、患者さんが希望する生活を送るにはどうすればいいかを考えてきました。症状が落ち着いたら、退院して地域社会に戻って欲しいですし、少し大げさにいうと、再入院させたら私の負け、くらいの気持ちで治療に向き合っています。それにはLAIを使った治療が大きな役割を果たしています。
LAI導入説明のコツ
大事なのは無理強いしないことです。いくら私たちが良いと思っても、患者さんが納得してくれないと、治療が続きません。ですから私は、何回かに分けてLAIの説明をしています。
入院患者さんであれば、退院までの3か月の間に2-3回くらいに分けて説明するように心がけています。最初は、症状が落ち着いた早い段階で、剤形として主にLAIと飲み薬と貼り薬の3タイプがあることや、それぞれのメリットとデメリットを簡単にお伝えします。「治療はずっと続けていくものだから、あなたが続けやすい治療を考えてみてね」と伝え、LAIの資材も渡しておきます。2回目は、「読んでくれた?」といった感じで話を進めます。そのときに、とくに説明するのが血中濃度です。LAIを使うと血中濃度の推移が安定することで症状の安定や副作用の軽減が期待できることは必ずお伝えします。外来患者さんも同じです。最初に説明をしてから、次回来院されたときにもう一度話をしてみて、同意してくれた患者さんには3回目の説明のときに導入しています。
LAIを断られたときのポイント
断られたときにどうするかもポイントだと思います。1回お勧めして断られたら2度と「うん」と言ってくれないと考えている先生もいらっしゃると思いますが、私はそうは思いません。
私は、2回目の説明で断られた患者さんに対しては、そのときはそれ以上の話はしません。時間を空けてもう一度話すようにしています。「押しどき」というのもあると思います。飲み忘れなどで症状が悪化したタイミング、副作用などで困っていることがあるという相談があったタイミングです。内服薬からLAIに切り替えることで入院回数を減らせたというデータもありますから、そこまで含めて患者さんにお伝えすれば、考え直す方もいます。
ご家族への説明も大事です。LAIに切り替えれば、ご家族は服薬確認しなくて済みます。一緒に話を聞いていたご家族が、自宅に戻ってからご本人に勧めてくれることもあります。そのようにしてゼプリオン*を導入し、最終的にゼプリオンTRI**に切り替えた患者さんも多くいます。
ゼプリオンの使用経験と使い方のコツ
SDAは陽性症状改善効果が期待でき、またLAIは血中濃度の安定による症状の安定と血中濃度依存の副作用の軽減も期待できます。ゼプリオンの用量規格は5種類と豊富で患者さんの状態に合わせて柔軟に対応しやすいところがメリットです。例えば、精神症状が軽ければゼプリオン低用量で症状をコントロールしながら最終的にゼプリオンTRIにつなげられる可能性も大いにありますから、症状が軽い場合にこそゼプリオンを目指しても良いのではないかと思います。加えて、私が報告したゼプリオンとゼプリオンTRIの使用経験※では、ゼプリオン導入後に入院回数が有意に減り、医療保護入院や措置入院といった非自発的入院の占める割合が有意に低下しました。一時的な休息のためなどの理由で患者さん自身が入院を選択できる程度の精神状態維持に寄与していたと考えられ、これらから同剤の臨床的意義が示唆されたと考えます。
※1:渡邉佑一郎:新薬と臨牀, 2025;74:1183-1195.[利益相反:本論文の著者はヤンセンファーマ株式会社、住友ファーマ株式会社より講演料を受理している。]
「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。
ゼプリオンTRIの臨床意義
ゼプリオンTRIの登場により、ゼプリオンの使用意義がさらに高まりました。毎月病院に来なくてはいけなかったのが3か月に1回に減れば患者さんの負担が軽減し、その分を仕事や自分の好きなことなど治療以外に充てられます。患者さんも、とても喜んでくれています。中にはゼプリオンTRIに切り替えた後も毎月受診される方もいます。注射剤を打たずに話をするだけの受診なので「気が楽なんです」とポジティブな気持ちで来てくれているようです。先ほどの調査でも、ゼプリオンで安定した状態の患者さんがゼプリオンTRIに切り替わることで、POM※による治療満足度の改善が示されました。
プロラクチン上昇など副作用への対処
ゼプリオン、ゼプリオンTRI導入によるプロラクチン上昇を懸念される先生もいらっしゃるかと思います。私も、男女を問わず若い患者さんは特に注意しています。ただ、値は高いけれども日常生活に影響がない方もいます。副作用の相談があれば、他剤に切り替えるか、継続するかを患者さんと話し合いますが、症状安定などのベネフィットの高さからゼプリオン継続を希望される患者さんの方が多い印象があります。なお、先ほどの調査では副作用(パーキンソニズム)が1例、ゼプリオン導入後1年以上経過し、観察期間中にゼプリオンを中断したのは10例でした。ゼプリオンからゼプリオンTRIに切り替えた20例において中断例はありませんでした。
本論文においては、投与期間中の安全性情報は報告されていません。
本剤の本剤の安全性情報については、最新の電子添文をご参照ください。
ゼプリオンの投与を検討すべき患者さん
以上より、ゼプリオンをこのような患者さんへ投与することを検討してみてはいかがでしょうか。
・再発、再入院を減らしたい患者さん
・就労・就学を目指している患者さん
・通院負担を減らし仕事など治療以外の時間を増やしたい患者さん(ゼプリオンTRIを目指した治療)
・治療満足度を上げたい患者さん(ゼプリオンTRIを目指した治療)
| *【ゼプリオンⓇ電子添文2025年12月改訂(第6版)】 効能又は効果:統合失調症 用法及び用量:通常、成人にはパリペリドンとして初回150mg、1週後に2回目100mgを三角筋内に投与する。その後は4週に1回、パリペリドンとして75mgを三角筋又は臀部筋内に投与する。なお、患者の症状及び忍容性に応じて、パリペリドンとして25mgから150mgの範囲で適宜増減するが、増量は1回あたりパリペリドンとして50mgを超えないこと。 |
| **【ゼプリオンTRI®電子添文2025年12月改訂(第6版、再審査結果)】 効能または効果:統合失調症(パリペリドン4週間隔筋注製剤による適切な治療が行われた場合に限る) 用法及び用量:本剤は、パリペリドン4週間隔筋注製剤が4ヵ月以上継続して投与され、適切な治療が行われた患者に対し、最終投与の4週間後から切り替えて使用する。通常、成人には、パリペリドンとして、パリペリドン4週間隔筋注製剤最終投与量の3.5倍量を、12週間に1回、三角筋又は臀部筋に筋肉内投与する。 |
ゼプリオンの国際共同臨床試験:アジア共同臨床第Ⅲ相試験 JPN-4
国際共同臨床試験(アジア共同臨床第Ⅲ相試験 JPN-4)
ゼプリオンTRI国際共同臨床第Ⅲ相試験(PSY-3011試験)
(ランダム化・多施設共同・二重盲検・非劣性試験)(海外データ、日本人を含む)
ゼプリオンTRI国際共同臨床第Ⅲ相試験(PSY-3011試験)