第1回 ラツーダの実臨床における使用実態調査

これからの外来統合失調症治療について考える

開催日:2023年8月6日 これからの外来統合失調症治療を考える座談会(会場:住友ファーマ株式会社 東京本社)


統合失調症治療は、長期入院治療から外来治療中心の時代へ移行しています。
本コンテンツでは、精神科病院、大学病院精神科、メンタルクリニックで外来統合失調症患者さんを多く診療されている4名のエキスパートの先生方にお集まりいただき開催した座談会(開催日:2023年8月6日)の様子をまとめた記録集の内容を、3回にわたりダイジェストでご紹介します。
第1回の今回は、ラツーダの実臨床における使用実態調査について取り上げます。

第1回 ラツーダの実臨床における使用実態調査

「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

ラツーダの実臨床における使用実態調査は、渡邉先生よりご紹介いただいた内容を中心にご紹介します。

渡邉先生

私からは、以前の勤務先である倉敷仁風ホスピタルで、私が主治医を務めるF2圏[ICD-10]患者さんのうち、ラツーダを使用した患者50名の転帰をまとめたデータ1)をご紹介します(図1)。

図1 調査概要

図2に患者背景を示します。男性が28%、女性が72%で、外来で導入した割合は74%でした。発症からラツーダ開始までの期間は約12年で、PANSS総合得点は93.32でした。ラツーダ使用最高用量(平均)は62mgで、80mgまで増量した方が52%を占めました。

図2 患者背景

8週間のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量を見ると、ラツーダ投与1週後から有意に改善していたことが示されました(図3)。
また、8週間のPANSS各項目別スコア変化量の平均値推移を見ると、投与8週後時点で、妄想、幻覚による行動、猜疑心などの陽性症状に加えて、不安、抑うつなどの陰性症状も改善を示していました。

図3 PANSS合計スコアのベースラインからの変化量推移[8週間]

図4は、52週間継続投与できた37例のPANSS合計スコアのベースラインからの変化量の推移です。ある程度のところでプラトーになるわけではなく、継続する中で、少しずつ徐々に改善する傾向があるので、長く続けてもらうことに意義があることが示唆されます。

図4 PANSS合計スコアのベースラインからの変化量推移[52週間]

52週間のPANSS各項目別スコア変化量の平均値推移を見ると、8週間の結果と同様の傾向が認められました(図5)。

図5 PANSS下位項目別スコアのベースラインからの変化量推移[52週間]

また、52週の累積治療継続率は74%であり、中止理由としては、効果不十分が5例、通院中断が4例、副作用が2例などでした(図6)。

図6 累積治療継続率(Kaplan-Meier法)[52週間]

52週時点の副作用は、14例(28%)に認められ、その内訳は全身倦怠感(眠気も含む)5例(10%)、パーキンソニズム、嘔気が各4例(8%)などでした(図7)。嘔気については、飲み始めに気持ち悪くなっても、継続していくうちに消失した方がほとんどでした。

図7 副作用発言状況[52週間]

以上のことから、ラツーダは、効果面で他剤に引けを取らない印象です。また、忍容性が確認され効果不十分な場合は80mgまで、なるべく早く増量することがポイントだと思います。さらに、情動面症状の改善も期待できる薬剤だと思います。一方で、治療抵抗性や、前薬が高用量で使われているケースからの切り替えは、使い方が難しい印象です。
また、ラツーダは20mg錠、40mg錠、60mg錠、80mg錠と4規格あります。そのため、増量しても1錠の服用で済みます。これは、患者さんの服薬負担の軽減につながると考えています。患者さんの中には、錠数が増えることを嫌がる方もいらっしゃいますので、そういった方には、増量しても服用錠数が変わらないラツーダは受け入れてもらいやすいと思います。

図8は私が考える急性期統合失調症に対するラツーダの投与方法です。ポイントは、早めに増量することで、忍容性が確認され効果不十分な場合は、翌日には80mgまで増量しています。その根拠となるのが、PANSS合計スコアのベースラインからの変化量を、ラツーダを1週間未満の早期で増量した群と対照群で比較したデータです(図9)。ラツーダ開始から80mg/日まで増量した期間は、早期増量群(ラツーダ開始後1週未満で80mgまで増量)は平均2.1日、対照群(ラツーダ開始後1週以上で80mgまで増量)は平均27.1日でした。PANSS合計スコアのベースラインからの変化量は、早期増量群では1週後から有意に改善した一方、対照群では1週後では有意な改善は認められず、2週後から有意に改善しました。このデータから、忍容性が確認され効果不十分な場合は、なるべく早めに80mgまで増量することが望ましいのではないかと考えています。

堀先生

導入方法として、他剤へ上乗せした患者さんが30%いましたが、どのような意図で上乗せされたのでしょうか。

渡邉先生

前薬のLAIを最高用量まで使っていても、幻覚や妄想が取り切れていない方に上乗せしました。

堀越先生

渡邉先生と古川先生の使用実態調査1,2)の結果を見て、特にアカシジアの出現頻度は私自身の臨床経験でも同様の印象を持っており、意外と少ないと感じました。この辺の情報を、多くの先生方と共有できれば、ラツーダがより使いやすくなるのではと思います。

堀先生

2つの使用実態調査1,2)は副作用のデータも結果が似ていましたね。外来治療では、副作用が少ない薬剤を選択することが重要になるので、こういった実臨床のデータは大変参考になります。

ラツーダの国際共同第3相試験(JEWEL試験):検証的試験についてはこちらをご覧ください。

JEWEL試験(検証的試験)

国際共同第3相試験(JEWEL試験):検証的試験

急性増悪期の統合失調症患者を対象とした検証的試験

今回は、座談会記録集から、倉敷仁風ホスピタルにおけるラツーダの使用実態調査の結果をご紹介しました。
本座談会では、外来統合失調症治療における現状と課題に始まり、2つの使用実態調査を含むラツーダの複数のエビデンスをご解説いただいております。また、統合失調症患者さんを社会につなげていくための外来統合失調症治療において、ラツーダをどのようにお役立ていただけるか、活発にご議論いただきました。
本日の内容が、先生のご診療の参考になれば幸いです。

Reference
  1. 渡邉 佑一郎. :最新精神医学., 28:435, 2023 本論文の著者は住友ファーマ株式会社から講演料を受領している。
  2. 竹内 一平. ほか. :新薬と臨牀., 70:752, 2021 本論文の著者に大日本住友製薬株式会社(現:住友ファーマ株式会社)より、講演料、コンサルタント料などを受領しているものが含まれている。

ラツーダ錠20mg/錠40mg/錠60mg/錠80mgの製品基本情報(適正使用情報など)

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