第4回 ロナセンテープの線条体ドパミンD2受容体占有率

第4回 ロナセンテープの線条体ドパミンD2受容体占有率

統合失調症をはじめ、抗精神病薬による薬物治療を行っても、臨床効果や有害事象の発現は患者さん個々によって異なることが知られています。本コンテンツでは、その要因を薬物動態学(pharmacokinetics)と薬力学(pharmacodynamics)の視点から、千葉大学名誉教授 伊豫 雅臣先生と日本医科大学大学院医学研究科 精神・行動医学分野 大学院教授 舘野 周先生に解説いただきます。

統合失調症薬物治療におけるPK/PDの重要性

伊豫 雅臣 先生

千葉大学/名誉教授

伊豫 雅臣先生

統合失調症をはじめ、抗精神病薬による薬物治療を行っても、臨床効果や有害事象の発現は患者個々によって異なることを経験しています。
その要因を薬物動態学(pharmacokinetics)と薬力学(pharmacodynamics)の視点から考える必要があるのではないでしょうか。
今後の精神科医療において、薬物療法を考える際には薬物動態学理論・薬力学理論をもとに、状況に応じた選択・工夫を行うことが重要だと考えます。
本シリーズでは、PK/PD理論に基づく抗精神病薬の使い方を、次のポイントで考えていきます。

  • PK/PDの基本的な考え方
  • 各領域の治療薬
  • Concentration Stability(CS)率
  • 線条体ドパミンD2受容体占有率

今回は、線条体ドパミンD2受容体占有率の観点から、日本医科大学大学院医学研究科 精神・行動医学分野 大学院教授 舘野 周先生に解説いただきます。

抗精神病薬の治療効果と副作用発現の考え方

統合失調症患者さんは食事が不規則であったり、消化管の状態に不安があると言われています。このような背景から経口剤では、消化管での薬物吸収に個人差が大きいと考えられ、そのことによって薬物血中濃度の個人差が大きい可能性があります。
結果、抗精神病薬の治療効果と副作用発現に差が出るのかもしれません。

経皮吸収型製剤と経口剤における薬物動態の違い

その点、経皮吸収型製剤は経口剤と違い、薬物が食事や消化管の状態に影響を受けずに血中へ移行します。そのため、薬物血中濃度を確保しやすい剤形の1つだと言えます。
加えて、経口剤のような急激な血中濃度の上下が少ないことから、効果の安定ならびに血中濃度依存的に発現する副作用が出にくいことが期待されます。

ロナセンテープとロナセン錠の血中濃度推移

ここで、ロナセンテープとロナセン錠の血中濃度推移を確認してみます。
反復投与後の定常状態においてロナセンテープでは、ロナセン錠のような服薬直後の一時的な血漿中濃度の上昇がなく、24時間の貼付時間を通じて概ね一定の濃度が維持されると考えられます。
よって、長時間にわたり血漿中濃度を維持することが示唆されました。

※「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

ロナセンテープとロナセン錠のドパミンD2受容体占有率

舘野 周 先生

日本医科大学大学院医学研究科 精神・行動医学分野/大学院教授

舘野 周先生

では、線条体ドパミンD2受容体占有率の変動はどうでしょうか。
統合失調症患者において線条体ドパミンD2受容体占有率が65%以上で治療反応性が、78%以上で錐体外路系副作用の発現がみられたことからTherapeutic Windowは65~78%であることが報告されています。
ロナセンテープは40~80mgでこのTherapeutic Windowを満たすことが確認され、脳内ドパミンD2受容体占有率の日内変動がロナセン錠に比べ小さいことが確認されました。

PK/PDから考えるロナセンテープの臨床的意義

このような観点から、ロナセンテープが持つPK/PDの特性が、統合失調症治療の急性期でも維持期でもフィットすると考えています。

救急/入院(急性期治療)

急性期治療では抗精神病薬を十分量/十分期間投与し、精神症状の早期改善が求められます。
ロナセンテープは、通常40mg/日で使用開始しますが、患者さんの状態に応じて初日から承認最大用量の80mgを貼付でき、さらに定常状態において血中濃度推移が安定することから早期の症状改善が期待できます。

外来(維持期治療)

維持期治療では再発・再燃を防ぐことが重要であり、ドパミン過感受性精神病(DSP: dopamine supersensitivity psychosis)を発症させない薬物治療が求められています。統合失調症治療において、血中濃度推移が安定することで日常の些細なストレスによる精神症状の揺れを最小化し、再発・再燃を予防することが期待されます。
また我々の研究から、DSPの予防・治療においては脳内濃度が安定するような薬剤・剤形を選択する必要があると考えています。

伊豫 雅臣 先生、舘野 周 先生

先生方、いかがでしたでしょうか。
血中濃度推移の安定化だけでなく、線条体ドパミンD2受容体占有率の安定化も考慮した薬物治療により、よりよい統合失調症治療を目指していきましょう。

■ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験■
(ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験 (ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験 (ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

統合失調症患者を対象としたロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。

※「警告 ・ 禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。


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