第3回 Concentration Stability(CS)率とは

第3回 Concentration Stability(CS)率とは

統合失調症をはじめ、抗精神病薬による薬物治療を行っても、臨床効果や有害事象の発現は患者さん個々によって異なることが知られています。本コンテンツでは、その要因を薬物動態学(pharmacokinetics)と薬力学(pharmacodynamics)の視点から、千葉大学名誉教授 伊豫 雅臣先生と公益財団法人慈圭会 慈圭病院 院長 武田 俊彦先生に解説いただきます。

統合失調症薬物治療におけるPK/PDの重要性

伊豫 雅臣 先生

千葉大学/名誉教授

伊豫 雅臣先生

統合失調症をはじめ、抗精神病薬による薬物治療を行っても、臨床効果や有害事象の発現は患者個々によって異なることを経験しています。
その要因を薬物動態学(pharmacokinetics)と薬力学(pharmacodynamics)の視点から考える必要があるのではないでしょうか。
今後の精神科医療において、薬物療法を考える際には薬物動態学理論・薬力学理論をもとに、状況に応じた選択・工夫を行うことが重要だと考えます。
本シリーズでは、PK/PD理論に基づく抗精神病薬の使い方を、次のポイントで考えていきます。

  • PK/PDの基本的な考え方
  • 各領域の治療薬
  • Concentration Stability(CS)率
  • 線条体ドパミンD2受容体占有率

今回は、CS率の観点から、公益財団法人慈圭会 慈圭病院 院長 武田 俊彦先生に解説いただきます。

抗精神病薬の薬物動態の問題と課題

統合失調症患者さんは食事が不規則であったり、消化管の状態に不安があることがよくあるかと思います。
特に食事の状況や消化管の状態の確認が難しい急性期治療では、使用する薬物が十分に吸収されない可能性を考慮しなければなりません。
よって、十分な薬物血中濃度を確保できる薬物動態学的な特徴を持った薬剤を選択することは、急性期薬物治療において重要なことだと考えます。かつ、症状が安定し、副作用が少ない薬物治療の選択は、患者さんの維持期を見据える上で忘れてはいけません。

各領域における経皮吸収型製剤の展開とその特徴

武田 俊彦 先生

公益財団法人慈圭会 慈圭病院/院長

武田 俊彦先生

同じ成分でも剤形が変わると薬物動態が変わることがあり、特に徐放剤・持効性注射剤・経皮吸収型製剤では元となる錠剤との違いは大きいと考えられます。
経皮吸収型製剤は経口剤と違い、薬物が食事や消化管の状態に影響を受けずに血中へ移行します。
そのため、薬物血中濃度を確保しやすい剤形の1つだと言えます。
加えて、経口剤のような急激な血中濃度の上下が少ないことから、効果の安定ならびに血中濃度が上がりすぎることによって生じる副作用を管理しやすいことが期待されます。

Concentration Stability(CS)率とは

かねてから、血中濃度の日内変動から中枢ドパミン受容体阻害がtransientとsustainedに分類されてきましたが、その日内変動の程度をAUC0-24hr(投与後24時間の血中濃度時間曲線下面積)と Cmax(最高血中濃度)からCS率として求めることができます。(最大値:1.00)

例えば、経口剤で効果不十分な場合に増量するというのは、Cmaxを増やすことでAUCを増やすイメージです。
しかし、それは血中濃度依存的な副作用の発現リスクが上昇するというトレードオフの関係にありました。
一方でCS率を増やす方向の増量は、Cmaxを増やさずにAUCを増やすという方法です。このことは、血中濃度依存的な副作用は増やさず、効果の増強を期待することができます。

ロナセンテープとロナセン錠のCS率

ブロナンセリンのCS率は、ロナセン錠では0.47、ロナセンテープでは0.91でした。
本結果は、仮にCmaxを一致させて投与/貼付した場合、ロナセンテープではロナセン錠と比較して血中濃度推移の安定化が期待できると同時に、24時間で約倍量のブロナンセリン未変化体が体内にあることを意味しています。

ロナセンテープとロナセン錠の血中濃度推移

ここで、ロナセンテープとロナセン錠の血中濃度推移も確認してみます。
反復投与後の定常状態においてロナセンテープは、ロナセン錠のような服薬直後の一時的な血漿中濃度の上昇がなく、24時間の貼付時間を通じて概ね一定に保たれると考えられます。
このように、血中濃度推移のデータからもロナセンテープは長時間にわたり血漿中濃度を維持することが示唆され、成分は同じロナセン錠とも異なる薬物動態を示すことが明らかになりました。

※「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。

PK/PDから考えるロナセンテープの臨床的意義

このような観点から、ロナセンテープが持つPK/PDの特性が、統合失調症治療の急性期でも維持期でもフィットすると考えています。

救急/入院(急性期治療)

急性期治療では抗精神病薬を十分量/十分期間投与し、精神症状の早期改善が求められます。
ロナセンテープは、通常40mg/日ですが患者さんの状態に応じて初日から承認最大用量の80mgを貼付でき、早期の症状改善が期待できます。
また、定常状態においてブロナンセリンが安定的な血中濃度推移を示し、CS率でも示されたように有効血中濃度域内で十分量の薬剤暴露が期待されます。

外来(維持期治療)

維持期治療では再発・再燃を防ぐことが重要であり、ドパミン過感受性精神病(DSP: dopamine supersensitivity psychosis)を発症させない薬物治療が求められています。統合失調症治療において、血中濃度推移が安定することで日常の些細なストレスによる精神症状の揺れを最小化し、再発・再燃を予防することが期待されます。

伊豫 雅臣 先生、武田 俊彦 先生

先生方、いかがでしたでしょうか。
ロナセンテープのPK/PDの特性を考慮した薬物治療を実践し、よりよい統合失調症治療を目指していきましょう。

■ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験■
(ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験 (ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

ロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験 (ロナセンテープの統合失調症患者を対象とした検証的試験)

統合失調症患者を対象としたロナセンテープの国際共同第3相試験:検証的試験の結果はこちらからご覧ください。

※「警告 ・ 禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。


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