決して稀ではないファブリー病

  • 診療科小児科 / 遺伝診療
  • エリア神奈川県川崎市 / 東京都千代田区

衞藤 義勝(えとう よしかつ)先生

新百合ヶ丘総合病院 小児科/東京クリニック 小児科

衞藤 義勝(えとう よしかつ)先生

決して稀ではないファブリー病

 ファブリー病はX染色体連鎖の遺伝病であり、α-ガラクトシダーゼの酵素欠損により発症します。疾患の頻度は1/40,000人1)といわれていましたが、近年イタリア人の新生男児で1/3,100人2)、台湾人の新生男児では1/1,250人3)など、新生児スクリーニングでは高頻度でファブリー病が報告されており、決して稀な疾患でないことが明らかになってきました。
私は東京慈恵会医科大学で治療法がない30年前からこの疾患の研究に携わってきました。現在では東京クリニック(または南東北病院)で引き続きファブリー病患者さんの治療に携わっています。

ファブリー病の症状・病型・性差

 ファブリー病と聞くと小児科の病気と思われる先生方も多いですがその症状は多岐にわたり様々な診療科で潜在している可能性のある疾患です。臨床症状としては、小児期より四肢末端の疼痛、発汗低下、角膜混濁、被角血管腫、消化器症状などがみられ、青年期以降に腎症状、心症状、脳血管障害が発現します。
四肢疼痛は「焼けるよう」「突き刺すよう」と表現される痛みが発現し、特に夏場や入浴時等、体温が上昇した際に症状が誘発されます。角膜混濁は渦巻状の混濁が特徴的であり、眼科でスリットランプを実施し確認することができます。被角血管腫は粟粒上の皮疹が体幹部を中心に発現します。腎症状は蛋白尿に始まり、末期腎不全まで進行するケースも多くみられます。心症状としては左室肥大、不整脈などがみられ、完全AVブロックのため30代で突然死した症例にであったこともあります。
 ファブリー病の病型として、男性では幼少期から症状がみられる古典型と、成人期以降に心症状、腎症状を中心に症状が発現する亜型(遅発型)に分類されますが、これはα-ガラクトシダーゼの残存活性の違いによるものと考えられています。一方、女性は保因者となりますが、X染色体のランダムな不活化により、無症状な症例から腎不全にまで至る重症例まで様々です。しかし保因者でも8割以上に何らかの症状が発現することが報告されており4)治療対象となっています。私たちの研究では保因者でも心症状はほぼ全員で確認されました。

医師による早期診断・早期治療が重要

 私は小児期の患者から成人期の症例まで幅広く診断・治療にあたっています。患者さんの多くはファブリー病の症状を早期に呈しているにも関わらず、疑われることなく診断に至っていないことがあります。患者さんによっては30年以上経過してようやく診断されたケースもありました。
 ファブリー病の治療は、酵素補充療法などが保険適応となっています。また、厚生労働省の指定難病となっており、指定難病の認定を受けたファブリー病患者は、医療費助成が受けられます。酵素補充療法により疼痛の軽減、心症状の改善、腎機能の安定化など様々な臨床効果が報告されています5)。しかし、臓器障害が進行してからでは効果が期待しにくいため、医師がファブリー病を意識して早期に診断、治療介入することが重要となります。
まずはファブリー病を疑うことが大切です。ファブリー病が疑われる場合には男性であれば欠損しているαガラクトシダーゼでほぼ診断することができます。女性では遺伝子変異など検査を実施し確定診断いたします。疑いの症例に出会い、対応に困った際には遠慮なくご相談ください。

  1. Desnick Molecular Based Of Inherited Disease volⅢα-Galactosidase A Deficiency : Fabry Disease
  2. Spada Am J Hum Genet 2006 Jul;79(1):31-40
  3. Hwu.W.Hum Mutat . 2009 Oct;30(10):1397-405.
  4. Kobayashi.M J.Inherit Metab Dis2008 Dec;31 Suppl 3:483-7
  5. 衞藤義勝、大橋十也 責任編集 ファブリー病UpDate改訂第2版 P.206, 診断と治療社、2021
医療機関名称 新百合ヶ丘総合病院
住所 〒215-0026 神奈川県川崎市麻生区古沢都古255
電話番号 044-322-9991(代表)
医師名 衞藤 義勝(えとう よしかつ)先生
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医療機関名称 東京クリニック 小児科
住所 〒100-0004 東京都千代田区大手町2-2-1 新大手町ビル
電話番号 03-3516-7151(代表)
医師名 衞藤 義勝(えとう よしかつ)先生
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