【テーマ:COVID-19②】
気分障害とCOVID-19感染,入院,死亡のリスクとの関連:系統的レビューとメタ解析

JAMA PSYCHIATRY, 78, 1079-1091, 2021 Association Between Mood Disorders and Risk of COVID-19 Infection, Hospitalization, and Death:A Systematic Review and Meta-analysis. Ceban, F., Nogo, D., Carvalho, I. P., et al.

背景と目的

COVID-19の重症化の危険因子としては,既存の心血管疾患,肥満,糖尿病,癌,呼吸器疾患などが確立されている。気分障害患者では,免疫機能の低下との関連が指摘されていること,COVID-19の重症化リスクを高めるとされている非感染性の身体疾患の合併が多いこと,貧困や医療へのアクセス不足などの社会的因子などによる影響で,COVID-19のリスクが高いことが考えられる。

既存の気分障害がCOVID-19の危険因子となるかどうかが判明すれば,公衆衛生の優先順位に関する情報が加わることになる。本研究では,既存の気分障害があると,COVID-19感受性,入院,重篤なイベント,死亡のリスクが高いという仮説について検証を行った。

方法

PubMed/MEDLINE,Cochrane Library,PsycInfo,Embase,Web of Science,Google/Google Scholar,LitCovid,そして選択した参照文献リストにおいて,データベース開設から2021年2月1日までの期間について,気分障害のある集団とない集団でのCOVID-19の転帰に関するデータを報告した研究を系統的に検索した。年齢・性別・国籍を問わず,気分障害者と気分障害のない人での定量的なCOVID-19の転帰を報告した一次研究論文を選択し,特定された1,950報の論文のうち,21報の研究について解析を行った。方法論の質とバイアスのリスクは,Newcastle-Ottawa Scale(NOS)20を用いて評価した。

主要評価項目は,COVID-19感受性,COVID-19入院,COVID-19重症イベント,COVID-19死亡とし,気分障害の有無での転帰を比較した。

既存の気分障害の有無にかかわらず,対応する研究集団におけるCOVID-19感受性,入院,重症化,死亡の95%信頼区間(CI)付きオッズ比(OR)及び/または要約データを抽出し,該当するORを報告していない研究の場合は,要約データから未調整のORを算出し,報告された調整オッズ比(aOR)と組み合わせた。

結果

本レビューには,9,100万人以上を対象とした21報の研究が含まれた。COVID-19感受性と既存の気分障害との間に関連は認められなかった[OR:1.27,95%CI:0.73-2.19;p=0.40;予測区間(PI):0.11-14.23;n=65,514,469]。また,COVID-19の重症化と既存の気分障害についても関連は認められなかった(OR:0.94,95%CI:0.87-1.03;p=0.19;n=83,240)。COVID-19による入院(OR:1.31,95%CI:1.12-1.53;p=0.001;PI:0.78-2.20;n=26,554,397)と死亡(OR:1.51,95%CI:1.34-1.69;p<0.001;PI:1.09-2.07;n=25,808,660)については,既存の気分障害のある人では,そうでない人と比べて有意に高いリスクが認められた。

Egger回帰切片検定の結果は統計的に有意ではなかったが,複合ファネルプロット(レビューに含まれる全てのデータセットについて,aORと未調整ORの両方を含む)の目視検査は,出版バイアスの存在を示唆するものであった。

結論

既存の気分障害とCOVID-19の転帰との関連を検討した本系統的レビュー及びメタ分析では,気分障害の既存がある者は,COVID-19の入院及び死亡のリスクが高いことが示された。これらの結果は,既存の気分障害のある者は,肥満など他の既存症のある者と同様に,既往症に基づくリスク群として分類されるべきであることを示唆している。今後の研究では,気分障害の既存がある者においてワクチン接種の効果に差があるかどうか,また基礎疾患となっている精神障害の縦断的な経過に対してCOVID-19感染が影響するかどうかを検討する必要がある。

253号(No.1)2022年4月1日公開

(赤石 怜)

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