統合失調症に対する認知矯正療法の効果,中核要素,反応の調整因子:無作為化臨床試験の系統的レビューとメタ解析

JAMA PSYCHIATRY, 78, 848-858, 2021 Effectiveness, Core Elements, and Moderators of Response of Cognitive Remediation for Schizophrenia: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Clinical Trials. Vita, A., Barlati, S., Ceraso, A., et al.

背景

認知機能障害は統合失調症の中核的特徴の一つであり,機能的転帰と強い関連がある。認知矯正療法は,認知プロセスの改善を目的とする行動トレーニングに基づく介入法であり,統合失調症の治療法として有効であるが,まだ議論されている点もある。たとえば,認知矯正療法に治療反応性の高い患者特性は明らかではない。

本研究では,統合失調症の認知機能に対する認知矯正療法の有効性と,機能転帰に対するその一般化可能性を検討し,様々な無作為化臨床試験についての包括的な最新情報を提供する。また,治療法の中核要素と,治療法及び患者の特性に関する因子について解析を行った。

方法

2011年に行われたWykesらによる包括的なメタ解析の参考文献を,適格性の基準に照らしてスクリーニングした後,電子データベース(PubMed,Scopus,PsycInfo)を用いて2011年1月~2020年2月に発表された論文を系統的に検索した。対象は,精神保健サービスを利用している統合失調症患者で,認知矯正療法とその他の対照条件を比較した無作為化臨床試験とし,複数の独立した審査員によって評価した。データの抽出と合成はPRISMAガイドラインに従った。転帰評価にはCohen dを用いた。試験の方法論的品質はClinical Trials Assessment Measureで評価した。

主要評価項目は,基準時点から治療後までの全般性認知機能と全般性機能の変化とした。その後,事前に規定した仮説に基づいてメタ解析,サブグループ解析,感度解析を行い,治療方法や患者の特徴に関連する反応の潜在的な調節因子を特定した。

結果

同定された1,815件の報告のうち,358件を評価し,130件の研究に関する194件の報告(8,851名)が評価対象となった。

その結果,認知矯正療法は認知機能と全般性機能に対して小~中程度の効果を示し,d(95%信頼区間:CI)は,認知機能で0.29(0.24-0.34),全般性機能で0.22(0.16-0.29)であった(共にp<0.001)。

治療法における有効性の重要な中核要素及び特性は,積極的で訓練されたセラピスト(認知:χ12=4.14,p=0.04;機能:χ12=4.26,p=0.04),構造化された認知戦略の進歩(認知:χ12=9.34,p=0.002;機能:χ12=8.12,p=0.004),心理社会的リハビリテーションとの統合(全般性認知:χ12=5.66,p=0.02;全般性機能:χ12=12.08,p<0.001)であった。

認知矯正療法に対して良好な治療反応をもたらす患者側の調節因子としては,教育年数の不十分な患者[全般性認知:係数-0.055(95%CI:-0.103--0.006),p=0.03,全般性機能:係数-0.061(95%CI:-0.112--0.011),p=0.02],病前IQの低さ[全般性機能:係数-0.013(95%CI:-0.025--0.001),p=0.04],基準時点の症状が重度であること[全般性認知:係数0.006(95%CI:0.002-0.010),p=0.005]が挙げられ,これらによって主要転帰の改善が大きくなった。

結論

本研究結果より,認知矯正療法には,統合失調症患者における認知機能及び全般性機能を改善する利点があることが明らかとなった。認知矯正療法はエビデンスにのっとった治療法であり,薬物療法の効果が認知機能や寛解に対して限定的であることを鑑みれば,統合失調症患者の治療ガイドラインに盛り込まれ,臨床現場でより広く実施されるべきであることが示唆された。

253号(No.1)2022年4月1日公開

(尾鷲 登志美)

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