産後精神病:新しい疾病の誕生か?

LANCET PSYCHIATRY, 8, 1017, 2021 Post-Partum Psychosis: Birth of a New Disorder? The Lancet Psychiatry

出産後2週以内の女性に生じる,急性発症の感情症状及び精神病症状については,産後精神病の可能性が考えられてきたが,その対応を考慮する上で問題となるのは,ICDもDSMも,産後精神病を独立した障害として取り扱っていないことである。これらの女性たちは,産後発症という特記事項がついた,一般的な躁状態や精神病性抑うつとして取り扱われるが,これが治療を難しくしている。McGorryはかつて,産後精神病の臨床像は,通常の統合失調症や躁状態とは大きく異なることを指摘した。DiFlorioらは,初発産後精神病が,産後精神病エピソードを持つ双極性障害と遺伝学的に区別できるかどうかの検討を通じて,その病因解明の手掛かりを追求した。初発産後精神病の女性と双極性障害を持つ女性を比較すると,後者のみが抑うつのリスクを有し,前者の方が長期予後が良いことが示唆された。

本研究は白人のみを対象としており,今後は他の人種における検討が望ましい。

診断の面でも,DSMやICDにおいて,産後精神病が独立した疾患として取り扱われることが望まれる。更にはより幅広く,遺伝子と症候群との関係解明を通じて,診断体系が再検討されると良いだろう。

254号(No.2)2022年6月20日公開

(滝上 紘之)

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