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PSYCHOABSTRACT 255号（No.3）2022年8月8日公開 >
双極性障害患者コホートにおける未確定の優位極性：有病率，重症度，及び見落とし

双極性障害患者コホートにおける未確定の優位極性：有病率，重症度，及び見落とし

J AFFECT DISORD, 303, 223-229, 2022 Undetermined Predominant Polarity in a Cohort of Bipolar Disorder Patients: Prevalent, Severe, and Overlooked. Fico, G., Anmella, G., Sagué-Villavella, M., et al.

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目的

優位極性（predominant polarity：PP）の概念では，双極性障害患者の全ての再燃エピソードのうち3分の2以上がうつ病エピソードを呈したものをDPP（depressive PP），あるいは3分の2以上が躁病エピソードを呈したものをMPP（manic PP）と定義することが一般的である（Carvalho et al., 2014）。しかし，その定義は非常に厳しいため，未確定の優位極性（undetermined PP：UPP）に分類されてしまう患者の割合が高くなる。DPPまたはMPPを示す患者は半数以下に過ぎないのにもかかわらず，大半を占めているUPP患者の臨床的相関因子を評価した研究は非常に少ないことは問題である。そこで著者らは，双極性障害患者の大規模サンプルにおいてUPPを調査し，その社会人口統計学的特徴，臨床的特徴，治療関連特徴をDPPやMPPと比較して概説することを目的とした。

方法

前方視的コホートから得られた横断的及び縦断的データを含む自然経過研究を行った。

1998年10月～2020年5月にバルセロナ病院クリニックの双極性障害・うつ病病棟に入院した全ての患者を本研究の対象者とした。サンプルは優位極性に従ってDPP，MPP，UPPの3群に分け，社会人口統計学的変数及び臨床的変数を比較した。

ロジスティック回帰モデルを用いて，全ての独立変数が従属変数であるUPPに及ぼす影響を検討した。

結果

対象は合計708名であり，男性319名（45.1％），女性389名（54.9％），平均年齢は45.33歳（±14.18）であった。生涯のエピソードの平均回数は15回（±18.9）であり，1回のみだったのは14名（1.9％）であった。対象全体のうちUPPは437名（61.7％），DPPは136名（19.2％），MPPは135名（19.1％）であった。

DPP及びMPPと比較して，UPP患者は生涯の抑うつエピソード（H＝191.19，p＜0.001），軽躁エピソード（H＝22.77，p＜0.001），混合性エピソード（H＝43.20，p＜0.001），全てのエピソード（H＝45.04，p＝0.00）を多く経験し，また，自殺企図（χ²＝9.772，p＝0.08），特に非暴力的（χ²＝10.408，p＝0.05），季節性パターン（χ²＝10.400，p＝0.006），急速交代型（χ²＝33.390，p＜0.001）と高い関連を示した。生涯のエピソードが10回以上ある患者は，MPPやDPPではなくUPPを呈する傾向が強かった（χ²＝28.704，p＜0.001）。また，UPPではDPPやMPPに比べ，ラモトリギン（χ²＝22.39，p＜0.001），アセナピン（χ²＝9.560，p＝0.008），クエチアピン（χ²＝9.941，p＝0.007）による治療歴を有する率が有意に高いことが示された。

ロジスティック回帰モデルを用いた分析の結果，最終モデルに有意に寄与した四つの独立変数は，混合性エピソードの数［B＝0.335，p＝0.03，オッズ比（OR）＝1.398，信頼区間（CI）：1.118-1.749］，攻撃的行動（B＝0.62，p＝0.007，OR＝1.861，CI：1.190-2.913），季節性（B＝0.754，p＝0.003，OR＝2.025，CI：1.289-3.501），ラモトリギンによる治療（B＝0.724，p＝0.006，OR＝2.101，CI：1.244-3.550）であった。