曝露反応療法後に薬物療法を中止した強迫症患者におけるウェルネスの維持:無作為化臨床試験

JAMA PSYCHIATRY, 79, 193-200, 2022 Maintenance of Wellness in Patients With Obsessive-Compulsive Disorder Who Discontinue Medication After Exposure/Response Prevention Augmentation: A Randomized Clinical Trial. Foa, E. B., Simpson, H. B., Gallagher, T., et al.

背景

強迫症(OCD)の第一選択の治療は,セロトニン再取り込み阻害薬(SRIs)と曝露反応療法(EP/RP)である。SRIsはOCDの唯一の適応薬であるが,患者の多くはSRIsに反応を示すものの,ほとんどの患者でQOLに影響を及ぼす明らかな症状が継続しており,治療ガイドラインではそれらの場合には他のSRIに変更した上で他剤やEP/RPによる補強療法を行うことを推奨している。

OCDへのEP/RP治療後に薬物治療を中止しウェルネスを維持できるかどうかを調査することは重要であり,本研究が最初の無作為化臨床試験(RCT)となる。著者らは,プラセボ群はSRIs継続群に劣らないという仮説を立て,検証を行った。

方法

米国の大学等の施設において,SRIを12週以上服薬し,エール・ブラウン強迫尺度(Yale-Brown Obsessive-Compulsive Scale:Y-BOCS)評点≧18の中等度以上のOCD症状を1年以上にわたって呈する18~75歳の患者137名を対象とし,EP/RPを25セッション行った。ウェルネス(Y-BOCS評点≦14と定義)が得られた103名を,無作為にSRI群(継続群)とプラセボ群(減量群)に割り付けた。減量群では,0~4週でSRIを1週間当たり25%ずつ減量し,4週目の用量を4~24週で維持した。

主要転帰はY-BOCS(0~40点),副次転帰はハミルトンうつ病評価尺度(HDRS:0~52点)及び生活の質と満足度アンケート[Quality-of-Life Enjoyment and Satisfaction Questionnaire-Short Form(Q-LES-Q-SF):0~100%]とした。

結果

解析対象となった101名[平均(SD)年齢=31.0(11.2)歳,女性55名(54.5%)]を,減量群51名,継続群50名に割り付けた。

24週間で両群共にわずかにY-BOCS評点が増加した。24週後のY-BOCS評点の平均(SD)は減量群で11.47(6.56)点[95%信頼区間(CI):9.64-13.30点],継続群で11.51(5.97)点(95%CI:9.83-13.19点)であり,両群で有意な差はなかった。

HDRS評点は両群共に24週後に増加していたが,増加率及び24週後のHDRS評点には両群間で有意な差は認められず,24週後のHDRS評点の平均(SD)は減量群で5.69(3.84)点(95%CI:4.63-6.74点),継続群で4.61(3.46)点(95%CI:3.64-5.58点)であった。Q-LES-Q-SF評点は24週後に両群で低下していたが,平均(SD)は減量群で68.01(15.28)%(95%CI:63.76-72.26%),継続群で70.01(15.59)%(95%CI:65.98-74.03%)であり,有意な差は認められなかった。

24週後の非劣性検定では,Y-BOCS,HDRS,Q-LES-Q-SFの各尺度において,減量群は継続群よりも劣っていないという結果であった。24週時にウェルネスを保った患者の割合は両群で差が認められなかったが,臨床的に悪化した患者の割合は,継続群よりも減量群において高かった[23/51(45.1%) vs 12/50(24.0%),p=0.04]。

議論

本二重盲検無作為化臨床試験では,EP/RP療法後にウェルネスを達成したOCD患者は,SRI継続群に劣ることなくSRIを減量中止することができていた。しかし,減量群では臨床的悪化率が高く,半減期が短いSRIでより悪化する傾向であった。今後の研究では,SRIの半減期や減量速度による差異を評価する必要がある。

255号(No.3)2022年8月8日公開

(石﨑 潤子)

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