ドイツにおける急性期統合失調症患者に対するamisulprideとオランザピン併用療法と単剤療法との比較(COMBINE):二重盲検無作為化対照試験

LANCET PSYCHIATRY, 9, 291-306, 2022 Amisulpride and Olanzapine Combination Treatment versus Each Monotherapy in Acutely Ill Patients With Schizophrenia in Germany (COMBINE): A Double-Blind Randomised Controlled Trial. Schmidt-Kraepelin, C., Feyerabend,S., Engelke, C., et al.

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背景

統合失調症治療において抗精神病薬の併用は一般的に行われているが,エビデンスに基づくガイドラインでは推奨されていない。これまでの無作為化対照試験の結果は,通常は治療抵抗性統合失調症に限定して用いられるクロザピンと他の抗精神病薬の併用療法に限られている。

抗精神病薬単剤治療が無効な患者において,クロザピンを選択できない場合にどのように治療効果を向上させるかについては,指針がない。そこで,機序的に相乗効果が期待できるamisulpride*とオランザピンの併用療法を単剤療法と比較し検証することを目的として本研究を行った。

方法

本研究は16週間の多施設共同二重盲検並行群間無作為化対照試験で,ドイツ全域の16の精神科入院施設から患者を組み入れた。組み入れ基準は,18~65歳の成人で,統合失調症または統合失調感情障害の初回エピソード以外で,これまでの抗精神病薬治療の有無にかかわらず,陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計点が70点以上,陽性症状下位尺度の2項目が4点以上であることとした。

患者は,amisulpride+オランザピン,amisulpride単剤(amisulpride+プラセボ,200~800mg/日),オランザピン単剤(オランザピン+プラセボ,5~20mg/日)のいずれかに1:1:1の割合で16週間の治療を受けるよう無作為に割り付け,ブロック別無作為化は施設によって階層化した。試験期間中,患者と治験責任医師を盲検化するため,amisulpride,オランザピン及びプラセボは同一のカプセルで投与した。

 主要評価項目は,基準時点から8週目にかけてのPANSS合計評点の変化とし,modified intention-to-treat集団(無作為に介入群に割り付けられ,少なくとも1回の試験薬投与を受けた全患者)において解析を行った。

事前に決定したとおり,PANSS合計評点の変化の群間差はt検定(Bonferroni-Holm法により調整)により検討し,その後,事前に計画したベイズ解析,欠損値を考慮した混合モデルに基づく置換法,PANSS基準時点評点で調整した事後ANCOVA解析を実施した。本試験は,ClinicalTrials.gov(NCT01609153),ドイツ臨床試験登録(DRKS00003603),欧州連合医薬品規制当局臨床試験データベース(EudraCT-No.2011-002463-20)に登録されている。

結果

2012年6月15日~2018年12月15日の間に,13,692名の患者の適格性を評価して,13,364名を除外し(適応基準を満たさない,参加拒否,薬理学的治療を変更するには不適切など),328名を介入群に無作為に割り付けた。112名がamisulpride+オランザピン投与群,109名がamisulpride+プラセボ投与群,107名がオランザピン+プラセボ投与群に無作為に割り付けられた。スクリーニングに失敗した患者及び介入を受けなかった患者を除外した321例のmodified intention-to-treat集団(amisulpride+オランザピン:110例,amisulpride+プラセボ:109例,オランザピン+プラセボ:102例)において,主要転帰について解析を行った。この321名の患者のうち,229名(71%)が男性,平均年齢は40.2歳[標準偏差(SD) 11.7],296名(92%)が白人,25名(8%)がその他の民族であった。

主要評価項目については,8週目におけるPANSS合計評点の減少は,amisulpride+オランザピン群[-29.6(SD 14.5)]が,オランザピン+プラセボ群[-24.1(13.4)]よりも有意であった(p=0.049,Cohenのd=SD 0.396)が,amisulpride+プラセボ群[-25.2(SD 15.9)]と比較して有意差は認められなかった(p=0.095,Cohenのd=0.29)。

8週間後及び16週間後に,性機能障害,体重,腹囲の増加は,amisulpride+オランザピン群がamisulpride+プラセボ群に比べ有意に認められ,有害事象の発生数,及び重篤な有害事象の発生数に群間差はなかった。試験参加中に2名が死亡し,amisulpride+オランザピン群とオランザピン+プラセボ群の患者であったが,いずれも治療との関連はないと評価された。

結論

本試験は,抗精神病薬の併用療法を前方視的な質の高いデザインで評価した,公的資金による最大規模の試験の一つである。統合失調症の中等度以上の臨床的に重要な症状が認められる,複数回エピソードの入院患者を対象とした結果,8週間後のPANSS合計評点は,オランザピン+プラセボ群に比べ,amisulpride+オランザピン群で有意に改善されることが示された。

Amisulpride+オランザピン併用療法は様々な抗精神病薬単剤療法で十分に症状が改善せず,クロザピンを拒否,あるいは不適応となる患者に対する代替療法となり得る可能性がある。しかし副作用の発生がより増える傾向を考慮し,比較検討しなければならない。

また,併用療法群では,通常単剤療法よりも低用量で良好な効果が得られたことから,併用療法において抗精神病薬の用量を更に減らし,副作用を最小限に抑えながら効果を最大限に引き出すことが期待できるかもしれない。 

*日本国内では未発売

257号(No.5)2022年12月19日公開

(佐久間 睦貴)

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