心的外傷後ストレス障害に対するインターネットを用いた誘導型認知行動療法:実用的多施設共同無作為化非劣性試験(RAPID)

BMJ, 377, e069405, 2022 Guided, Internet Based, Cognitive Behavioural Therapy for Post-Traumatic Stress Disorder: Pragmatic, Multicentre, Randomised Controlled Non-Inferiority Trial (RAPID). Bisson, J. I., Ariti, C., Cullen, K., et al.

目的

本研究の目的は,一つの心的外傷性イベントに関する軽度~中等度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対して,心的外傷に焦点を当てたインターネットを用いた誘導型認知行動療法(CBT-TF)が,対面式CBT-TFに非劣性かどうかを判断することである。

方法

本研究は多施設共同無作為化対照非劣性試験であり,評価者は治療割り付けについて盲検化された。参加者は精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)に従ってPTSDの診断を受けた成人で,軽度~中等度の症状を有していた。

参加者は二つの介入に対して1:1の比率で無作為化された。対面式CBT-TFでは,参加者は,60~90分の対面式個人セッションを最大12回受けた。インターネットを用いた誘導型CBT-TFは,8段階のオンラインのガイド付き自助プログラムであった。治療開始時にセラピストが参加者と1時間ほど面談し,プログラムの説明とデモンストレーションを行い,参加者はそれを自分の好きな時間にオンラインで完了させた。その後,2週間ごとに30分のミーティングを4回,通常は対面で行った。

主要評価項目は,無作為化後16週目に臨床医が実施したDSM-5のPTSD尺度(Clinician Administered

PTSD Scale for DSM-5:CAPS-5)とした。副次評価項目は,無作為化後52週目のCAPS-5とした。自記式の副次評価項目は,無作為化後16週目及び52週目に測定された。

結果

196名の参加者が無作為化された。完遂率は,インターネットを用いた誘導型CBT-TF群と対面式CBT-TF群で,それぞれ16週の主要評価項目で82%と85%,52週で74%と71%であった。

無作為化後16週間の主要評価項目であるCAPS-5の軽減において,インターネットを用いた誘導型CBT-TFは,対面式のCBT-TFに対して非劣性であることが示された(図,平均差1.01,片側95%信頼区間:-∞-3.90,非劣性p値=0.012)。

16週間後の全ての副次転帰の結果においても非劣性であることが示されたが,一般的自己効力感と患者満足度については結論が出ず,対面式CBT-TFを支持する結果となった。52週目の時点で,調整済み平均CAPS-5評点の改善は両群で維持された。52週目の時点の分析において,平均差はCAPS-5の所定の非劣性マージン未満であったが,非劣性分析では,五つの分析のうち四つで信頼区間(CI)が非劣性マージンを超えていたため結論が得られず,対面式CBT-TFを支持していた。インターネットを用いた誘導型CBT-TFの参加者1人当たりの平均コストは,277ポンド(95%CI:253-301ポンド)であった。対面式のCBT-TFを実施した場合の平均コスト(729ポンド,95%CI:671-788ポンド)は著明に高かった(p<0.001)。

結論

一つの心的外傷性イベントに関する軽度~中等度のPTSD患者に対して,インターネットを用いた誘導型CBT-TFが臨床的に有効で,安価で忍容性が高く,対面式のCBT-TFに対して非劣性な治療であることが示された。この結果は,PTSD患者に対してより多くの選択肢を提供し,現在のケア経路の改善を促進し,健康と福祉を向上させるはずである。

図.主要評価項目:16週時点における,臨床医が実施したDSM-5のPTSD尺度(CAPS-5)の非劣性解析(精神障害の診断と統計マニュアル第5版,DSM-5の基準によるPTSDの診断),ガイド付き自助(GSH)群[心的外傷に焦点を当てたインターネットを用いた認知行動療法(CBT-TF)]と対面式CBT-TF群の2群における比較

257号(No.5)2022年12月19日公開

(米澤 賢吾)

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