若年の双極性障害に併存した摂食障害

J CLIN PSYCHIATRY, 83, 21m14201, 2022 Comorbid Eating Disorders in a Sample of Youth With Bipolar Disorder: Elevated Burden of Dimensional and Categorical Psychopathology. Khoubaeva, D., Dimick, M. K., Roane, J. L., et al.

背景

双極性障害は重篤な気分障害であり,他の精神疾患との併存も多い。双極性障害に併存した摂食障害の重要性も認識されるようになってきており,たとえば成人の双極性障害患者の摂食障害の生涯罹患率は2~33%と,1~10%とされる一般人口に比較して高いことも示されている。しかしこの分野の研究の多くは成人集団を対象としており,若年の双極性障害患者に併存した摂食障害については,ほとんど知見が得られていない。

方法

カナダの第三次医療施設内の準専門クリニックで2009~2017年に,双極性障害(双極I型障害,双極II型障害,特定不能の双極性障害の診断基準を満たす)と診断された13~20歳の患者197名を対象とした。摂食障害の発症年齢は,初めてDSM-IVの摂食障害の診断基準を満たした年齢と定義し,摂食障害の既往歴/現病歴がある群とない群に分け,人口統計学的及び臨床医学的変数について単変量解析を行った。主観的な感情の不安定性,境界性パーソナリティ障害の評価には,それぞれChildren's Affective Lability Scale(CALS),Life Problems Inventory(LPI)を用いた。p値が0.1未満の変数について,後退型段階的線形回帰分析を行った。

結果

56名(28.4%)の患者が摂食障害の既往歴もしくは現病歴を有していた。7名(3.6%)が神経性食思不振症(AN),16名(8.1%)が神経性過食症(BN),33名(16.8%)が特定不能(NOS)の摂食障害であった。また57名(28.9%)が「むちゃ食い」の経験があり,うち35名が摂食障害(AN 3名,BN 16名,NOS 16名)の診断を受けたことがあるのに対し,22名は摂食障害の診断を受けたことがなかった。対象の平均年齢は16.69(±1.50)歳で,女性が67.5%を占めていた。

摂食障害の既往歴/現病歴と有意な関連があったのは,女性(p<0.001),双極II型障害(p=0.03),希死念慮(p=0.006),自殺企図(p=0.004),自殺企図ではない自傷行為(p<0.001),性的虐待(p=0.02),喫煙歴(p=0.001),不安症(p=0.004),心的外傷後ストレス障害(p=0.004),物質使用障害(p=0.006),個人精神療法受療歴(p=0.01),不安症の家族歴(p=0.01)であった。摂食障害の既往歴/現病歴がないことと有意な関連があったのは,双極I型障害(p<0.001)及びリチウムの使用歴(p=0.01)であった。摂食障害のある群は,より重篤な抑うつ症状の既往歴/現病歴(p<0.001),主観的な感情の不安定性(p<0.001),境界性パーソナリティ障害の特徴(p<0.001)を有していた。

多変量解析でも摂食障害と有意に高い関連を認めた因子は女性[オッズ比(OR)=4.61,p=0.004],喫煙歴(OR=2.78,p=0.02),個人精神療法受療歴(OR=3.92,p=0.03),不安症の家族歴(OR=2.86,p=0.02),LPIで評価した境界性パーソナリティ障害の特徴(OR=1.01,p=0.009)であった。一方,有意に関連が低かったのは双極I型障害(OR=0.21,p=0.03)であった。

結論

本研究では,若年双極性障害患者の約1/3に摂食障害の既往歴/現病歴を認め,中でもNOSの摂食障害が最多であった。本研究の限界としては,後方視的研究であること,摂食障害の診断にDSM-5ではなくDSM-IVを用いたことで「むちゃ食い障害(BED)」がBNではなく特定不能の摂食障害に含まれてしまったことなどが挙げられる。

258号(No.6)2023年3月9日公開

(真鍋 淳)

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