全般不安症患者においてヨガまたは認知行動療法に対する好みが治療成績や治療への関与に及ぼす影響

J PSYCHIATR RES, 153, 109-115, 2022 Impact of Preference for Yoga or Cognitive Behavioral Therapy in Patients With Generalized Anxiety Disorder on Treatment Outcomes and Engagement. Szuhany, K. L., Adhikari, S., Chen, A., et al.

背景

全般不安症(GAD)患者の治療への関与と転帰を最適化するには,ケアへの関心を高める因子(特定の治療に対する好みなど)と,それらが転帰に及ぼす影響を理解することが重要である。治療に対する患者の好みに合わせることで,治療への関与と転帰が向上することを示唆するエビデンスがいくつか存在するが,それらの結果に一貫性はない。

方法

本研究では,GADと診断された成人226名(70%が女性,平均年齢33.4±13.5歳)を対象として,認知行動療法(CBT)90名,クンダリーニ・ヨガ93名,ストレス教育43名に無作為化して12週間の治療を実施した無作為化対照試験(RCT)のデータ(Simonら,2021,NCT01912287)の二次解析を行った。無作為化の前に希望する治療を聴取した。

治療に対する好みと関連する因子を検討すると共に,上記のRCTでストレス教育よりも有意に効果があったヨガまたはCBTに無作為化された165名のサブサンプルにおいて,好みと実際に行われた治療が一致することによって治療反応及び関与の程度(脱落,ホームワークの遵守)が改善するかどうかを検討した。治療反応は,臨床全般印象度の改善度(Clinical Global Impression of Improvement)で2以下(かなり改善または非常に改善)と定義した。全ての介入において,参加者は毎日20分のホームワークを行うよう指示された。

結果

患者の好みはCBT(44%)とヨガ(40%)でほぼ同等で,女性はヨガを好む傾向があった[オッズ比(OR)=2.75,95%信頼区間(CI):1.27-5.94,p=0.01]。CBTを好むことは,基準時点における自己意識メタ認知(OR=0.90,95%CI:0.83-0.98,p=0.02)や知覚ストレス(OR=0.92,95%CI:0.85-1.00,p=0.04)の高さと関連していた。

好みと治療が一致することと治療反応との関連は,ヨガ群とCBT群のいずれにおいても示されなかった。好みと治療が一致していなかった群では,CBT群の方がヨガ群よりも治療反応が高かった(OR=11.73,95%CI:2.27-60.54,p=0.01)。好みと一致していた群では.ヨガ群とCBT群で治療反応に群間差はなかった。

また,脱落については,好みと治療が一致していた群では,CBT群の方がヨガ群に比べて脱落しにくかった(OR=0.15,95%CI:0.06-0.42,p=0.001)が,不一致の群ではこのような差は認められなかった。ヨガ群では,自分の好みの治療を受けた参加者は,そうでない参加者より脱落する可能性が高かった(OR=3.02,95%CI:1.20-7.58,p=0.04)。これは,CBTの場合には見られなかった(OR=0.37,95%CI:0.13-1.03,p=0.08)。好みと治療の一致とホームワークの遵守に有意な関連はなかった。

結論

CBTとヨガの好まれる割合は同程度であった。治療反応率は,CBTとヨガ共に,好みと一致していた場合には同程度であった。好みと不一致の場合には,CBTは有効性を示す可能性があるが,ヨガは効果が低いか,あるいは成果を高めるためにセッション前の学習を追加で行う必要があるかもしれない。今後,特に不安に対するヨガなど,好みを踏まえた研究を行うことは,個別化医療の展開に沿うものになるであろう。

258号(No.6)2023年3月9日公開

(谷 英明)

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