ADHD薬物療法のアドヒアランスと継続性を高めるための介入に関する系統的レビュー

J PSYCHIATR RES, 152, 201-218, 2022 A Systematic Review of Interventions to Enhance Adherence and Persistence With ADHD Pharmacotherapy. Parkin, R., Nicholas, F. M., Hayden, J. C.

背景と目的

注意欠如・多動症(ADHD)では薬物療法のアドヒアランス/継続性不良の割合が高いことが報告されているが,この問題を対象とした研究は限られている。本系統的レビューでは,将来的に介入の開発の指針とするため,ADHDにおける薬物療法のアドヒアランス/継続性不良に対処する介入を評価した。

方法

Embase,Pubmed,PsychINFO,CINAHL,Cochrane Library,Web of Scienceのデータベースを用いて,1980年1月~2021年1月に発表された文献の広範な検索を実施した。レビューへの組み入れ基準は以下の通りとした。①ADHDの適応症に薬物療法が処方されている,②アドヒアランスまたは継続性の改善を目的とした特定の医療システムによる介入を説明する研究,介入は処方された治療の変更を伴わず,医療従事者が実施可能,③介入を受けなかった対照群,または比較のための事前事後のデザインのいずれかを含む研究,④服薬アドヒアランスや継続性に対する介入の影響を報告した研究,及びADHDの臨床転帰に対する介入の効果を報告した研究,⑤無作為化対照試験(RCT)または観察研究,⑥研究環境が外来。また,以下の場合はレビューから除外した。①薬物療法を行っていない,②特定の介入を検討していない,③服薬アドヒアランス/継続性の転帰が報告されていない,④比較群や事前事後のデザインを用いていない。

結果

13報の研究が同定され,うち5報がRCTであった。介入としては心理教育,行動療法,心理教育/行動療法の併用,技術に基づく介入(オンラインコミュニティ,テキストメッセージ,スマートフォンのアプリケーション),書面によるインフォームドコンセント,看護師による支援の電話に基づく介入が含まれた。全ての研究がアドヒアランス/継続性の改善を報告していた。5報(RCT 4報を含む)はADHDの症状の改善も報告しており(全て小児・青年を含む),このうち,3報は心理教育による介入,1報は行動療法による介入,1報(RCTではない)はそれら両方の組み合わせであった。ほぼ全ての研究が,なんらかの形で教育を利用した介入であった。

心理教育単独の研究は5報であった。3報がRCTで,そのうち2報は3ヶ月の時点及び12ヶ月の時点でのアドヒアランスにおける効用を報告していたが,残りの1報は,参加者の募集が不十分であったため早期に中止された。

行動療法による介入の研究(RCT)は1報で,介入後6ヶ月でアドヒアランスの改善が報告されたが(12ヶ月では改善されず),かなりの脱落率が観察された。
 技術に基づく介入の研究は4報であった。このうちRCTは1報で,スマートフォンのアプリケーションを使用し,8週時点での短期的なアドヒアランスの向上を報告していたが,脱落率が高かった。

結論

ADHDにおける服薬指導の研究を進展させるには,効果的で持続可能な介入の開発を可能にするため,より多くの研究を行って現在のエビデンスで認められた限界に取り組む必要がある。本レビューから,少なくとも短期的には,介入が有望であることが示された。将来の介入は,戦略の組み合わせを用い,理論的な枠組みを持ち,アドヒアランス不良の最も多い理由をターゲットとすべきであると考えられる。また,介入は日常的な臨床診療に統合可能なものとすべきであり,患者の意見を取り入れる必要がある。

258号(No.6)2023年3月9日公開

(米澤 賢吾)

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