ADHDの大学生における物質使用による性的健康へのリスクの緩和

J CLIN PSYCHIATRY, 83, 21m14240, 2022 Moderation of Risks to Sexual Health by Substance Use in College Students With ADHD. Rohacek, A. M., Firkey, M. K., Woolf-King, S. E., et al.

背景

思春期の集団における注意欠如・多動症(ADHD)と不良な性的健康との関連に焦点を当てた文献が増加しており,ADHDの青年・若年成人は,ADHDでない青年・若年成人と比較して,生涯にわたる性感染症(STI)及び計画外妊娠の有病率が高いという報告もある。また,アルコールや大麻の使用は,性的健康不良の危険因子である。

方法

American College Health Association–National College Health Assessment III(ACHA-NCHA Ⅲ)の二次データ分析を実施した。2019年秋~2020年秋に(2019年秋,2020年春,2020年秋に実施),ACHA-NCHA III調査の一環として,米国内の155大学の大学生を対象にオンライン調査データを収集した。本研究では,サンプルを性的に活発な(すなわち,生涯の性的パートナーが1人以上),シスジェンダーで異性愛者の18~25歳の大学生36,236名に限定した。

参加者の年齢,人種,民族,性別,性的指向,現在の交際状況(異性と交際中かどうか)についてのデータを収集した。現在ADHDである,または過去1年間にADHDの治療を受けていると自己申告した参加者をADHD群に分類した。参加者は,過去1年間の性的パートナー,過去1ヶ月間のコンドーム使用,過去1年間の性的健康状態について報告した。参加者はまた,過去1年間の飲酒中のコンドームなし性行為の有無についても報告した。膣性交を行った参加者は,自分またはパートナーが,①前回膣性交を行った時に避妊を行っていたか,②過去1年間に緊急経口避妊薬を使用していたか,③過去1年間に妊娠していたかを報告するよう求められた。また,過去1年間にSTIの診断を受けたかどうか,予防的な性的健康管理の取り組み[ヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン接種状況や,過去1年間に婦人科検診(女性のみ)を受けたかどうかなど]も報告した。更に,過去1ヶ月間のアルコールと大麻の使用頻度について報告した。

結果

ADHDの大学生は,ADHDでない大学生と比較して,過去1年間の3名以上の性的パートナー,過去1ヶ月のコンドームなし膣性交,過去1年間の飲酒中のコンドームなし性行為を多く報告した。避妊具の使用については,群間差はなかった。しかし,ADHDの大学生は,ADHDでない大学生と比較して,緊急経口避妊薬の使用と計画外妊娠の回数をより多く報告した。ADHDの大学生は,ADHDのない大学生と比較して,過去1年間になんらかのSTIと診断されたことが多かった。ADHDの大学生は,過去1年間に婦人科検診を受けたこと,HPVワクチンを接種したことの両方を含め,同年代の学生と比較して予防的な性的健康管理を行っている傾向が強かった。

ADHDの大学生で大量飲酒をした者では,同じく大量飲酒をした非ADHDの大学生と比較して,飲酒中のコンドームなし性行為,避妊具の使用,緊急経口避妊薬の使用,STIの診断がより多く報告された。大麻の使用が多かったADHDの大学生は,大麻を使用していた非ADHDの同年代と比較して,膣性交時のコンドームなし性行為が少なく,飲酒中のコンドームなし性行為が多く,避妊具と緊急経口避妊薬の使用,STIの診断が多いことを報告した。

結論

ADHDを持つ大学生では,複数のネガティブな性的健康予後のリスクが高く,アルコールや大麻の使用により,その性的健康不良のリスクが上昇する。今後,性的健康に対する介入の有効性を調査する場合には,ADHDの大学生,特に物質使用を行っているADHDの大学生に特異的な転帰を検討し,この脆弱な集団にとって最適な転帰が得られるようなプログラムを適用することの必要性を評価すべきである。

258号(No.6)2023年3月9日公開

(グナリディス 愛)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。