イタリアにおけるベンゾジアゼピン,Z薬,オピオイド治療に関連する入院:不適切な使用に関連するリスク

EUR J CLIN PHARMACOL, 78, 1511-1519, 2022 Hospitalisations Related to Benzodiazepine, Z-Drug, and Opioid Treatment in Italy: A Claim on the Risks Associated With Inappropriate Use. Mattioli, I., Bettiol, A., Crescioli G., et al.

背景

過去20年,米国ではオピオイドの使用と乱用が急増し,これにより過剰摂取による死亡者数も増加して2016年には4万2,000人に上ったと推定されている。高所得国ではベンゾジアゼピン(BZD)やZ薬(ZD)の乱用も問題になっている。その結果,米国と欧州では,これらの薬剤の処方の増加や乱用に伴い,有害事象(AE)による救急外来(ED)受診者数の増加が確認されている。本解析では,イタリアにおいて,ED受診や入院に至ったBZD・ZD・オピオイドの使用に関連する有害事象の評価と特徴付けを行うことを目的とした。

方法

2007年1月1日~2018年12月31日の間に積極的に収集された,ED受診を要するAEが疑われる症例のファーマコビジランス報告書に関するイタリアのデータベース「MEREAFaPS」を対象に,後方視的研究を実施した。本研究は,イタリアの五つの地域(ロンバルディア州,ピエモンテ州,トスカーナ州,エミリア・ロマーニャ州,カンパニア州)を代表する,総合病院の90ヶ所以上のEDを対象としたものである。

患者の入院を必要としたAEは重篤とし,病棟に入院した患者,または短期集中観察室に紹介された患者は全て入院と見なした。更に,AEの転帰を評価し,後遺症を伴う消失,未解決,完全消失,改善,死亡,入手不可に分類した。

結果

調査期間中(2007~2018年),BZDまたはZD(3,106名,BZD/ZD群),オピオイド(2,767名,OP群),またはそれらの併用(97名,BZD/ZD+OP群)に関わる5,970件のAE報告が収集された。年齢中央値は,OP群63.8歳(47.1~77.7歳),BZD/ZD群51.3歳(39.1~70.7歳),BZD/ZD+OP群58.8歳(45.5~79.9歳)で,他の2群に比べてオピオイド関連のAE発生患者の高齢化が有意に目立った(全体p=0.0001)。また,BZD/ZD群及びBZD/ZD+OP群では,半数以上が入院を必要とした(それぞれ52.1%,51.6%)。

BZD/ZD群の入院リスクの推定値について,各物質を個別に検討すると,長時間作用型BZDであるフルラゼパム[調整後報告オッズ比(ROR) 1.62,95%信頼区間(CI):1.18-2.22]とプラゼパム(調整後ROR 2.66,95%CI:1.05-6.70),及び中時間作用型BZDのロラゼパム(調整後ROR 1.26,95%CI:1.07-1.49)はBZDやZDに属する他の物質に比べ全て入院リスクが上昇していた。逆に,ミダゾラム(短時間作用型BZD)は,入院のリスクが有意に低かった(調整後ROR 0.21,95%CI:0.07-0.64)。

オピオイドについては,強いオピオイドは,弱いオピオイドと比較して,入院のリスクを有意に高める結果となった(調整後ROR 1.53,95%CI:1.25-1.87)(表)。

結論

薬物乱用歴のある若いBZD及びZDの使用者には注意が必要である。BZD及びZDの不適切な使用が公衆衛生に及ぼす影響についての認識を高めることは,AEに関連したED受診や入院の件数と費用を大幅に削減し,全ての年齢層で患者のQOLを向上させることができる。 

表.ベンゾジアゼピン/Z薬とオピオイドに関連する入院のリスク

258号(No.6)2023年3月9日公開

(グナリディス 愛)

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