パニック症の再発と持続の予測因子の包括的モデル:全米における3年間の前方視的研究の結果より

J CLIN PSYCHIATRY, 83, 20m13778, 2022 A Comprehensive Model of Predictors of Recurrence or Persistence in Individuals With Panic Disorder: Results From a National 3-Year Prospective Study. Scheer, V., Limosin, F., Blanco, C., et al.

背景

パニック症は,生涯罹患率5.1%の一般的な不安症である。パニック症は精神・身体合併症に加え,生活の質(QOL)と機能低下にも関連する。慢性化することも多く,平均罹病期間は8.4年であり,再発率は25~50%である。先行研究によれば,1~11年での寛解率は30~60%とされる。

パニック症は様々な経過をたどる疾患であり,複数の因子が再発や持続に影響を与えていると考えられる。そのため,より効果的な治療戦略を開発するために,包括的なモデルを確立することが求められている。

本稿では,長期間の全米規模の代表的な研究である,アルコールとその関連症状の全国疫学調査(National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions:NESARC)のWave 1(2001~2002年)及びWave 2(2004~2005年)を利用し,パニック症患者における3年間の再発及び持続リスクの包括的なモデルを構築することを目指した。

方法

対面調査で行われたNESARCのWave 1とWave 2のデータを用いた。回答率は,Wave 1が43,093件の面談で81%,Wave 2は34,653件の面談で70.2%であった。Wave 1からWave 2にかけての3年間の分析を行うため,両Waveの面談を完遂した参加者を対象とした。

過去1年にDSM-Ⅳでパニック症の診断を受けた775名を対象として,これまでの研究で予後予測因子の可能性があるとされた,五つの医学的要素の影響を同時に評価するために,構造方程式モデルを用いた。五つの要素とは,①パニック症の重症度,②併存症の重症度,③精神障害の家族歴,④社会人口統計学的な特徴,⑤受療行動であり,これらをWave 1で評価し,Wave 2でパニック症の再発と持続の評価をした。

結果

Wave 1でパニック症の診断を満たした775名のうち,3年間のパニック症の持続率は13%[標準誤差(SE)=0.3,n=101]で,再発率は27.6%(SE=0.4,n=214)であった。平均罹病期間は9.5年であった。

構造方程式モデルで解析した結果,3年間のパニック症の再発と持続の両方のリスクを上昇させたのは,全般的な精神病理学的要素のみであった。このことによって,特定の精神障害ではなく,併存した精神障害の全てに共通する因子が,再発と持続のリスクに関連していることが示唆された。また,症状で評価したパニック症の重症度,ストレスの大きなライフイベントの多さ,QOLに関わる身体的健康度の低さ,受療行動の欠如は,独立して有意に再発率のみを上昇させた。一方,それ以外の因子や,パニック症及び精神疾患の個々の症状,社会人口統計学的特徴で,再発と持続に直接の影響を与えたものはなかった。

結論

併存する精神障害の重症度と数,パニック症の症状の重症度と数,ストレスの大きなライフイベント,QOLと関連する身体状況が,再発と持続リスクの高いパニック症患者の特定に役立つ可能性がある。また再発のリスクを下げる可能性があるので,早期に受療行動を取ることが推奨される。

259号(No.1)2023年4月4日公開

(真鍋 淳)

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