妊娠中の自傷行為リスク:英国のプライマリーケアデータを用いた再発イベント生存分析

BR J PSYCHIATRY, 221, 621-627, 2022 Self-Harm Risk in Pregnancy: Recurrent-Event Survival Analysis Using UK Primary Care Data. Hope, H., Pierce, M., Osam, C. S., et al.

背景

SARS-CoV-2の後遺症は,「ロングCOVID」と呼ばれることもあり,新たな健康問題となっている。心理的苦痛によって急性上気道感染症の重症度が高くなり罹患が長期になるが,COVID-19後遺症の潜在的な危険因子として心理的因子を検討した研究は3件のみである。本研究では,パンデミックの初期に,SARS-CoV-2感染者において,感染前の心理的苦痛が感染後のCOVID-19後遺症発症リスク上昇と関連していたかどうかを検討した。

方法

参加者は,Nurses' Health Study II(NHSII),Nurses' Health Study 3(NHS3),Growing UP Today Study(GUTS)の三つの大規模縦断研究から組み入れた。2020年4月~9月1日(以降,基準時点と呼ぶ)に,合計58,612人の参加者がオンラインでのCOVID-19質問票に回答し,このうち基準時点のSARS-CoV-2検査結果が陽性でなく追跡調査にも回答した54,960人を解析の対象とした。

過去2週間の抑うつ症状と不安症状の頻度は,4項目の患者健康調査票(4-item Patient Health Questionnaire:PHQ-4)で評価した。UCLA孤独感尺度を用いて,孤独感や孤立感について評価した。また,高いレベルで経験した苦痛(ほぼ確実なうつ病,ほぼ確実な不安症状,COVID-19に関する心配,ストレスの自覚,孤独感)の種類の数を計算した。過去7日,30日,90日のSARS-CoV-2検査結果陽性,COVID-19の症状,2020年3月1日以降に起こったCOVID-19による入院は,全ての質問票で自己申告により報告された。COVID-19後遺症は,基準時点から336日後に実施した最終質問票で評価した。「長期的な(4週間以上続く)COVID-19の症状を経験した」と回答した場合,参加者は,経験したCOVID-19関連のあらゆる症状について報告した。COVID-19後遺症を自己申告した参加者に,①まだ症状が続いているかどうか,②その症状によって日常生活が妨げられる頻度を尋ねた。

結果

参加者54,960人は,女性96.6%,平均年齢(SD)は57.5歳(13.8)であった。19ヶ月の追跡調査でSARS-CoV-2検査が陽性となった3,193人の参加者を記録した。

全ての種類の苦痛は,人口統計学的因子で調整した後,用量依存的にCOVID-19後遺症のリスク上昇と有意に関連しており,リスク比(95%信頼区間:CI)はほぼ確実なうつ病で1.39(1.19-1.63),ほぼ確実な不安症状で1.47(1.27-1.70),ストレスの自覚で1.50(1.21-1.86)であった(全てp<0.01)。苦痛の種類が多い参加者は,COVID-19後遺症を発症するリスクが高かった[2種類以上 vs 全くなしの場合のリスク比は1.54(95%CI:1.28-1.86)]。

基準時点で苦痛があった参加者は,COVID-19後遺症の症状をより多く報告した[例:症状の数の平均(標準偏差)は,ほぼ確実なうつ病では3.4(2.1)個,うつ病なしでは2.5(1.7)個]。基準時点におけるうつ病,不安症状,心配,ストレスの自覚の存在は,時々~常に活動に支障をきたす症状を持つリスクの25~51%上昇と関連していた。

結論

既存の心理的苦痛は,感染後のCOVID-19後遺症発症リスクと関連することが示唆された。

表. 15~45歳の女性における妊娠中及び産後の自傷行為リスクの未補正及び補正値

259号(No.1)2023年4月4日公開

(グナリディス 愛)

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