早産児における新生児期のドコサヘキサエン酸補充と5歳時の知能

N ENGL J MED, 387, 1579-1588, 2022 Neonatal Docosahexaenoic Acid in Preterm Infants and Intelligence at 5 Years. Gould, J. F., Makrides, M., Gibson, R. A., et al.

はじめに

ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic Acid:DHA)は神経組織の構成要素である。29週以前の早産児では妊娠第3三半期に胎盤から供給されるDHAが枯渇しているが,標準治療として早産児に投与されるDHAの量は,妊娠第3三半期に胎盤から栄養される量よりも少ない。本研究の目的は,胎盤から供給されると想定されるDHA投与量と5歳時点の認知機能の関連を調査することである。

方法

本研究は気管支肺異形成症に対するDHAの効果を評価した研究(N-3 Fatty Acids for Improvement in Respiratory Outcomes:N3RO研究)の追跡研究として行われた。29週以前の早産児を無作為に2群に分け,介入群は60mg/kg/日のDHAを含む栄養を,標準治療群はDHAを含まない栄養を退院あるいは妊娠成立後36週に至るまでの期間投与した。N3RO研究に参加した13施設のうち,患者数の多かった5施設から患者を組み入れ,5歳時点でWechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence第4版(WPPSI-Ⅳ)を用いてフルスケール知能指数(full-scale intelligence quotient:FSIQ)を測定し,果物ストループ干渉評点(fruit Stroop interference score:FSIS)を用いて遂行機能を評価した。主要転帰はFSIQ値,副次転帰はWPPSI-Ⅳの下位項目,精神発達遅滞の有無,FSISとした。

治療企図(Intention -to-treat)分析を用い,連続変数は線形回帰モデル,二値変数は二項回帰モデル,数値変数は負の二項回帰モデルで解析した。

結果

5施設で組み入れられた子ども702名のうち656名が5年経過時点で生存しており,そのうち480名(介入群241名,対照群239名)のFSIQ値が入手できた。FSIQ値は介入群で有意に高かった[95.4±17.3 vs 91.9±19.1,調整差(adjusted difference) 3.45,95%信頼区間:0.38-6.53,p=0.03]。WPPSI-Ⅳの下位項目,FSIS,精神発達遅滞の有無には,両群で差が認められなかった。

結論

気管支肺異形成症に対するDHAの効果を評価する研究に組み入れられた29週以前に生まれた新生児において,妊娠成立後36週まで60mg/kg/日のDHAを投与した群はDHAを投与しなかった群よりも,5歳時点でのFSIQ値が若干高かった。

259号(No.1)2023年4月4日公開

(石田 琢人)

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