統合失調症の妊娠は,国際健康アジェンダにおいてより高い健康上の優先順位を与えられるべきである:統合失調症女性の43,611件の分娩と対照群40,948,272件の分娩の大規模メタ解析の結果

MOL PSYCHIATRY, 27, 3294-3305, 2022 Schizophrenia Pregnancies Should be Given Greater Health Priority in the Global Health Agenda: Results From a Large-Scale Meta-Analysis of 43,611 Deliveries of Women With Schizophrenia and 40,948,272 Controls. Etchecopar-Etchart, D., Mignon, R., Boyer L., et al.

背景

統合失調症の女性に対する周産期サービスの優先順位付けや組織化を行うにあたっては,医療政策の指針となる,強固で有益な疫学的推定値を得るための包括的なメタ解析が不足している。周産期医療システムにより質の高いケアを達成し,乳児死亡率及び統合失調症女性における重篤な病的状態を低減するには新たな知見と実証的な転帰が必要であることから,統合失調症女性とその新生児における,妊娠,出産,新生児合併症,乳児死亡に関する蓄積されたエビデンスの系統的レビューとメタ解析を実施した。

方法

MedlineデータベースのMeshタームに基づき,Google ScholarとWeb of Scienceを用いて,「(‘schizophrenia’ or ‘psychotic disorders’) AND (‘pregnancy’ OR ‘delivery’ OR ‘obstetrical’ OR ‘neonatal’)」で検索した。組み入れ基準は,症例群は国際疾病分類(ICD)または診断・統計マニュアル(DSM)コードに基づいて統合失調症‐スペクトラム障害と診断された妊婦であること,また対照群は統合失調症スペクトラム障害や精神疾患を持たない女性であることとした。

妊娠中の転帰として,妊娠糖尿病,妊娠高血圧症候群,血栓塞栓症,尿路感染症,貧血,子癇前症または子癇,胎盤剥離,産前出血,絨毛膜羊膜炎,切迫早産,膜早期破裂,胎盤合併症,少乳房症,多乳房症,妊娠中の一般感染症を抽出した。分娩の転帰として,帝王切開,分娩誘発,鉗子分娩,産後出血,胎児仮死,骨盤位,母体死亡を抽出した。新生児における転帰として,先天性奇形,窒息,5分後のApgar評点<7,集中治療,在胎不当過小(<10パーセンタイル),在胎不当過大(>90パーセンタイル),出生時の低体重(<2,500gまたは<10パーセンタイル),出生時の高体重(>4,000gまたは>90パーセンタイル),早産(妊娠期間32~37週間),超早産(妊娠期間<32週間),死産のデータを抽出した。

結果

11ヶ国の高所得国における26件の研究(統合失調症女性の分娩43,611件,対照の女性の分娩40,948,272件)を組み入れた。

対照群と比較して,統合失調症の女性は妊娠糖尿病[オッズ比(OR)2.35,95%信頼区間(CI):1.57-3.52,p<0.001],妊娠高血圧症候群(OR 1.55,95%CI:1.02-2.36,p=0.041),子癇前症または子癇(OR 1.85,95%CI:1.52-2.25,p<0.001),産前出血(OR 2. 28,95%CI:1.58-3.29,p<0.001),胎盤剥離(OR 2.20,95%CI:2.02-2.39,p<0.001),切迫早産(OR 2.91,95%CI:1.57-5.40,p<0.001),膜早期破裂(OR 1.29,95%CI:1.06-1.58,p=0.012),帝王切開(OR 1.33,95%CI:1.22-1.45,p<0.001),産後出血(OR 1.14,95%CI:1.04-1.24,p=0.003),胎児仮死(OR 1.80,95%CI:1.43-2.26,p<0.001)のリスクが高かった。

また,統合失調症女性の新生児は,先天性奇形(OR 1.86,95%CI:1.71-2.03,p<0.001),5分後のApgar評点<7(OR 1.93,95%CI:1.25-2.96,p=0.003),在胎不当過小(OR 1.63,95%CI:1.48-1.80,p<0.001),低出生体重(OR 1.75,95%CI:1.46-2.11,p<0.001),早産(OR 1.79,95%CI:1.62-1.98,p<0.001),超早産(OR 2.31,95%CI:1.78-2.98,p=0.001),死産(OR 2.06,95%CI:1.83-2.31,p<0.001)のリスクが高かった。また,統合失調症の女性の子どもでは,対照群と比較して,新生児死亡(OR 1.41,95%CI:1.03-1.94,p=0.033),乳児(生後29~365日)死亡(OR 2.87,95%CI:2.11-3.89,p<0.001),乳児・新生児(生後365日まで)での死亡(OR 2.33,95%CI:1.81-3.01,p<0.001)が多かった。

結論

統合失調症が超早産・死産・乳児死亡のリスク及び母親のメタボリックリスクの大幅な上昇と関連していることが確認された。統合失調症の女性とその新生児の複雑な社会的・生物学的ニーズに対応するためには,患者を中心とした統合的なケア介入が必要である。

260号(No.2)2023年5月30日公開

(グナリディス愛)

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