統合失調症,統合失調感情障害,双極性障害患者における強迫症状の有病率と関連要因

J CLIN PSYCHIATRY, 83, 21m14010, 2022 Prevalence and Correlates of Obsessive-Compulsive Symptoms in Individuals With Schizophrenia, Schizoaffective Disorder, or Bipolar Disorder. Robins, D. A., Grootendorst-van, N. H., Chang, C.-K., et al.

目的

強迫症状(OCS)の併存は,統合失調症,統合失調感情障害,双極性障害の患者において有害な転帰を予測する可能性があると示唆されている。たとえばいくつかの研究では,併存するOCSは発症年齢の早期化,精神症状の重症化,社会及び職業機能の低下に関連していることが報告されている。また,統合失調症,統合失調感情障害,双極性障害ではOCSと強迫症(OCD)の併存率が想定されている以上に高いため,OCSに関連した障害は重要な意味を持っている。

本研究では,英国の大規模な精神保健の症例登録データから,統合失調症,統合失調感情障害,双極性障害患者のOCSとOCDをテキストベースで自動確認し,人口統計学的因子や臨床特性などOCSとOCDの併存に関連する要因を探るために自然言語処理(NLP)技術を使用した。そして統合失調症,統合失調感情障害,双極性障害の患者におけるOCSとOCDの有病率を臨床記録から推定し,OCS併発の臨床的関連を明らかにすることを目的としている。

方法

データは,南ロンドンとモーズレイファウンデーション・トラスト生物医学研究センター(Foundation Trust Biomedical Research Centre)の症例登録から取得した。研究対象は,2007~2015年に統合失調症(ICD F20.x),双極性障害(ICD F31.x),統合失調感情障害(ICD F25.x)の診断を受けた個人に限定した。

診断に関する情報は,NLPアルゴリズムとICD-10コードを使用して得た。被験者の属性として,年齢,性別,民族,配偶者の有無,薬の使用など,また,アルコール使用障害,オピオイド使用障害,うつ病の二次併存診断などを抽出して解析を行った。臨床的特徴及び臨床的/機能的状態に関する情報は国民健康転帰尺度(Health of the Nation Outcome Scale)から得た。

OCS/OCD状態と臨床的特徴との関連の解析には,交絡因子を考慮しロジスティック回帰分析を実施した。

結果

観察期間中に,統合失調症,統合失調感情障害,双極性障害の症例22,551名が特定された。そのうち,5,179名(24.0%)がOCS(OCD診断を含む)を持つことがわかり,男性,非白人の英国人,貧困地域居住者,独身者であることが多かった。また,OCS/OCDはアルコール使用障害,オピオイド使用障害,うつ病の併存と有意な相関があった。2,574名(11.9%)がOCDを併存していることがわかった。

OCS/OCDは,記録された攻撃的な行動[オッズ比(OR)=1.18,95%信頼区間(CI):1.10-1.26],認知的問題(OR=1.21,95%CI:1.13-1.30),幻覚及び妄想(OR=1.11,95%CI:1.04-1.20),身体的問題(OR=1.17,95%CI:1.09-1.26)の発生率が高いことと関連があったが,意図的な自傷や抑うつ気分との関連は有意ではなかった。

更に,双極性障害患者(OR=1.24,95%CI:1.08-1.42)と統合失調感情障害患者(OR=1.23,95%CI:0.91-1.66)において,OCS/OCDと幻覚・妄想の有意な関連が認められた。

結論

OCSやOCDは,統合失調症,統合失調感情障害,双極性障害の患者に頻繁に記録され,より重度の精神病の臨床的特徴と関連していることが示唆された。今回の結果は,精神保健研究及び臨床現場における自動情報抽出ツールの可能性を示唆するものである。また,精神科医や治療者は,これらの症状が存在する可能性がある患者に対してOCS/OCDを適切に認識し,治療することが重要である。

260号(No.2)2023年5月30日公開

(佐久間 睦貴)

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