総合病院入院患者における精神障害の有病率:系統的アンブレラレビュー

J ACAD CONSULT LIAISON PSYCHIATRY, 63, 567-578, 2022 The Prevalence of Psychiatric Disorders in General Hospital Inpatients: A Systematic Umbrella Review. van Niekerk, M., Walker, J., Hobbs, H., et al.

背景と目的

コンサルテーションリエゾン精神医療の今後の発展を考える上で,総合病院に入院中の患者における精神障害有病率を明らかにすることは重要である。本研究の目的は,総合病院入院患者における精神障害の有病率に関する研究のアンブレラレビューを行い,包括的な知見をまとめることである。

方法

Ovid Medline,Ovid Embase,Ovid PsycINFO,EBSCO CINAHL,Scopusを検索し,データベースの開始から2021年9月までの間に出版された系統的レビューを同定した。キーワードは“prevalence”,“general hospital inpatient”,“psychiatric disorder”,“systematic review or meta-analysis”を用いた。以下の基準にあてはまる研究を含めた。すなわち,①系統的レビューである,②少なくとも一つ以上の精神障害の有病率を調査しており,診断は面接に基づいて行われている,③総合病院における成人(16歳以上)の入院患者の精神障害の有病率を調査している,④2報以上の研究を組み入れている。

2名の研究者が別々にスクリーニングを行い,論文の質を評価した。系統的レビューを行い,結果は記述し,また表にまとめ,新たなメタ解析は行わなかった。

結果

11,728報の研究をスクリーニングし,10報の系統的レビューが本研究に組み入れられ,アンブレラレビューが行われた。大うつ病に関しては6報の系統的レビューが存在し,有病率は12~20%と報告されていた。不安症の有病率に関しては2報の系統的レビューが存在し,統合された有病率について報告しているのは1報のみで,全ての不安症が8%,全般不安症が5%,パニック症が3%と報告されていた。せん妄に関しては1報の系統的レビューが存在し,有病率は15%と報告されていた。認知症に関しては1報の系統的レビューが存在し,有病率は2.8~63.0%の範囲と報告されていた。この他の精神障害の有病率について報告している系統的レビューは見当たらなかった。いずれのメタ解析でも組み入れられた研究のサンプルサイズは小さく,方法論的な限界を持つ研究が多かった。

考察

本レビューの結果では,総合病院の入院患者における精神障害の有病率は一般人口よりも高かった。コンサルテーションリエゾン精神医療の強化が望まれる。

260号(No.2)2023年5月30日公開

(石田 琢人)

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