全般性不安とうつ病の重症度の18年間の双方向関係に対するストレス反応性の媒介効果

J AFFECT DISORD, 325, 502-512, 2023 The Mediating Effect of Stress Reactivity in the 18-Year Bidirectional Relationship Between Generalized Anxiety and Depression Severity. Barber, K. E., Zainal, N. H., Newman, M. G.

背景

全般不安症(GAD)とうつ病(MDD)は,互いに併存しやすく,双方向的な危険因子でもある。また,ストレス反応性の亢進は,GADとMDDの長期的な関連に寄与する媒介機構である可能性がある。

本研究では,18年間にわたるGADとMDDの重症度の双方向的な関係をストレス反応性が媒介するかどうかを検討した。本研究の仮説は以下の通りである。仮説①:基準時点(T1)におけるGAD症状の重症度が高いほど,18年後(T3)におけるMDD症状がより重度になる。仮説②:T1のMDD症状の重症度が高いほど,T3のGAD症状がより重度になる。仮説③:T1のGAD症状とT3のMDD症状との関係は,9年後(T2)のストレス反応性によって媒介され,T1のGAD症状がより重症であれば,T2のストレス反応性がより高く,それによってT3のMDD症状の重症度が高くなる。仮説④:T1のMDD症状とT3のGAD症状との関係も,T2のストレス反応性によって媒介され,T1のMDD症状がより重症であれば,T2のストレス反応性がより高く,それによってT3のGAD症状の重症度が高くなる。

方法

本研究では,Midlife Development in the United States(MIDUS)研究に参加した3,294名の成人を対象とした。T1における平均年齢は45.6歳,女性が54.6%,白人が89%,大学卒業者46.8%であった。

参加者は,9年間隔で3時点(T1,T2,T3)の測定に参加した。GADとMDDの重症度は,WHO統合国際診断面接短縮版(Composite International Diagnostic Interview-Short Form:CIDI-SF)を用いて,T1,T2,T3で評価した。ストレス反応性は,自己記入式の多次元パーソナリティ質問票・ストレス反応下位尺度[Multidimensional Personality Questionnaire-Stress Reactivity Subscale]を用いて,T2で測定した。

解析については,まず,GADが将来のMDDの重症度に直接影響を与えるかどうか,逆にMDDが将来のGADの重症度に直接影響を与えるかどうかを検証する構造モデルを用いた。次に,ストレス反応性を媒介変数として含めた構造モデルを検討した。解析の頑健性を確認するために,補正済みの媒介分析を繰り返し実施した。T1の共変量,つまり,年齢,性別,収入,教育歴を別々に調整した。

結果

仮説①を支持するように,T1のGAD症状の重症度が高いほど,T3のMDDの症状がより重度であった[b=0.08,95%信頼区間(CI):0.06-0.11,p<0.001,d=1.29]。仮説②の通り,T1のMDD症状の重症度が高いほど,T3のGADの症状がより重度であった(b=1.17,95%CI:0.89-1.44,p<0.001,d=1.65)。また,仮説③に一致して,T1のGAD症状の重症度が高いほど,T2でのストレス反応性を介して,T3のMDD症状の重症化を予測する結果となった(d=0.45~0.49)。仮説④に関しては,T1のMDD症状の重症度が高いほど,T2でのストレス反応性を介して,T3のGAD症状の重症化を予測する結果となったが(d=0.45~0.54),T1のGAD症状を共変量に含めて補正すると,T2のストレス反応性は,T1のMDD症状の重症度とT3のGAD症状の重症度の関係において有意な媒介因子ではなくなった。

結論

本結果は,ストレス反応性による媒介が,GADが長期にわたってMDDを発症させるメカニズムの一つである可能性を示している。GADの治療においてストレス反応性を標的とすることで,その後のMDDの発症リスクを低減できる可能性があることが示唆された。

261号(No.3)2023年7月31日公開

(吉田 和生)

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