初回エピソードの統合失調症スペクトラム障害患者における臨床的回復,及び専門早期介入サービスと通常治療との長期的関連:OPUS試験の20年追跡調査

JAMA PSYCHIATRY, 80, 371-379, 2023 Clinical Recovery and Long-Term Association of Specialized Early Intervention Services vs Treatment as Usual Among Individuals With First-Episode Schizophrenia Spectrum Disorder:20-Year Follow-up of the OPUS Trial. Hansen, H. G., Starzer, M., Nilsson, S. F., et al.

背景

過去20年間で,統合失調症を含む初発精神病の患者を対象とした早期治療専門施設が開設され,無作為化臨床試験(RCT)により早期専門介入を検証した結果,症状の重症度,精神科入院,学校や仕事への参加に対して短期的にポジティブな臨床効果があることが判明している。しかし,これらの研究では,介入後5年以上の効果を報告したものはない。

本研究では,統合失調症スペクトラム障害の初回診断から20年後に,通常治療(TAU)と比較した集中的早期介入プログラム(OPUS)における早期介入サービス(EIS)の臨床的関連を調査することを目的とした。

目的

1998年1月~2000年12月に,デンマークのオーフス及びコペンハーゲンの管轄区域から,年齢18~45歳,統合失調症スペクトラムの初診者である計547名が本試験に参加した。参加者は,2年間のEIS(OPUS介入)または精神保健コミュニティ治療(当時の標準治療)のいずれかに,無作為に割り付けられた。

OPUSの介入は,修正アサーティブ・コミュニティ治療,社会技能訓練,心理教育,及び心理教育的な複数の家族グループへの参加の可能性を含む家族介入で構成されていた。両治療群とも,1年後の追跡時には,国のガイドラインに基づき,抗精神病薬による治療が同様に行われた。更に,20年間に参加者の臨床評価が4回(1年後,2年後,5年後,10年後)行われた。

20年間の追跡調査には以下の臨床評価尺度を用いた。精神症状及び陰性症状は,それぞれ陽性症状評価尺度(SAPS)及び陰性症状評価尺度(SANS)で測定した。機能レベルは全体的機能評定尺度(Global Assessment of Functioning scale:GAF-F)と個人的・社会的機能遂行度尺度(Personal and Social Performance scale),認知は統合失調症における認知の簡易評価(Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia),生活の質(QOL)は世界保健機関生活の質BREF(World Health Organization Quality of Life-BREF)の4項目(身体的健康,心理的関係,社会的関係,環境),健康関連QOLは5次元EuroQoL,自己認識身体健康はデンマーク健康特性(Danish Sundhedsprofilen)2013で評価した。更に,同居とパートナーシップ,雇用と労働能力,住居,自殺念慮,自殺企図などについて情報を収集した。

結果

547名の参加者のうち164名(30%)に対して,20年後の追跡時に面接による聞き取り調査を行った(平均年齢45.9歳,範囲:38~64歳)。精神病症状[推定平均差:0.14,95%信頼区間(CI):-0.25-0.52;p=0.48]及び陰性症状(推定平均差:0.13,95%CI:-0.18- 0.44;p=0.35)について,OPUS群とTAU群の間に有意差はなかった。混合モデル解析による時間×介入の交互作用項は,精神病症状次元では統計的に有意ではなかったが(F4,283.695 =2.195;p=0.07),陰性症状次元(F4,267.896=5.037;p≦0.001)及びGAF-F評点(F4,303.476=2.501;p=0.04)では有意であった。

20年後の追跡調査における全死亡率は14.1%(77名)であり,OPUS群では13.1%(36名),TAU群では15.1%(41名)であった。無作為化後10~20年の間では,OPUS群ではTAU群と比較して1年当たりの精神科入院率に差がないことがわかった(発生率比:1.20,95%CI:0.73-2.00;p=0.46)。

20年後の追跡調査では,53名(40%)が症状の寛解を得ており,23名(18%)が臨床的に回復していた。寛解は,OPUS群で37.5%(24名),TAU群で42%(29名)であった。臨床的回復は,OPUS群で14.1%(9名),TAU群で21.2%(14名)であった。

結論

本研究では,RCTの20年間にわたる追跡調査を行ったが,2年間のEISとTAUを受けた参加者の間で長期的な差は認められなかった。初回エピソードの統合失調症スペクトラム障害と診断された人において,EIS後に達成された良好な結果を維持し,長期的な転帰を更に改善するための新しい取り組みが必要である。

262号(No.4)2023年9月27日公開

(大谷 愛)

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