【テーマ②:クロザピン治療の最適化】
治療効果を改善するための血漿中クロザピン濃度の最適化:個別患者データのメタ解析及び受信者操作特性曲線解析

BR J PSYCHIATRY, 222, 241-245, 2023 Optimising Plasma Clozapine Levels to Improve Treatment Response: An Individual Patient Data Meta-Analysis and Receiver Operating Characteristic Curve Analysis. Northwood, K., Pearson, E., Arnautovska, U., et al.

目的

過去に発表された研究から得た個別患者データを用いて,クロザピン濃度の至適治療域をより包括的に決定するために,受信者操作特性曲線(ROC)解析を実施した。

方法

PubMed,PsycINFO,Embaseの系統的検索を,独立した2名により,データベースの開始から2022年8月23日までの期間で実施した。

コホート研究,症例シリーズ,症例対照研究,無作為化及び非無作為化対照試験を対象とし,単一症例報告は除外した。エンドポイント時のクロザピン濃度に関する個別患者データを提供している研究を組み入れた。

解析はRプログラミング環境で行った。ROC曲線解析は,ROCitパッケージを用いて行った。データが正規分布していなかったため,ノンパラメトリックモデルを適用した。曲線下面積(AUC)を算出し,AUC値>0.5はクロザピン濃度を用いた予測反応の可能性が偶然よりも高いことを示す。Youden指数は,特定の血漿中クロザピン濃度が反応を予測する上でどの程度有益であるかを示す指標として用いた。解析は,1日当たりのクロザピン投与量,及びクロザピンの濃度/投与量比[ng/mL単位の値を1日当たりの投与量(mg)単位で割った値]についても行った。

結果

合計7,694報の研究が,重複を除去した後,タイトルと抄録レベルで同定された。スクリーニングの結果,10報の研究が組み入れ基準を満たし,最終的に個別患者データが得られた9報の研究が組み入れられた。

組み入れられた試験の平均期間は10.4週間で,標準偏差(SD)は8.2,範囲は4〜24週間であった。参加者の平均年齢は32.6歳(SD=9.08)で,69.5%が男性であった。クロザピンの1日平均投与量は421mg(SD=160mg),平均クロザピン濃度は427ng/mL(SD=297ng/mL)であった。

ノンパラメトリックROC曲線解析で,AUCが0.612(95%信頼区間:0.54-0.68)であり,反応予測のためのROC曲線上の最適点を示すYouden指数は,クロザピン濃度372ng/mLで算出され(図),この濃度での反応特異度は57.3%,感度は65.7%であった。

考察

クロザピンの用量及び用量に対するクロザピンの濃度比について解析を行ったところ,これらはクロザピンに対する反応性の予測には有用ではないことが示唆された。

著者らのモデルに基づくと,治療域は250~550ng/mLが推奨され,350ng/mL以上で最適な効果が認められる。下限値で反応しない患者では,十分な治療を確実に行うために350ng/mL以上に増量すべきである。

図.血漿中クロザピン濃度カットポイントとmetric Youden指数

263号(No.5)2023年11月27日公開

(野村 信行)

このウィンドウを閉じる際には、ブラウザの「閉じる」ボタンを押してください。