【テーマ②:クロザピン治療の最適化】
クロザピンの最適化:精神病の治療反応と治療抵抗性作業グループによるデルファイコンセンサスガイドライン

SCHIZOPHR BULL, 49, 962-972, 2023 Clozapine Optimization: A Delphi Consensus Guideline From the Treatment Response and Resistance in Psychosis Working Group. Wagner, E., Siskind, D., Falkai, P., et al.

はじめに

クロザピン治療と薬物有害反応の管理に関する更なる専門家ガイダンスを改良するため,精神病の治療反応と治療抵抗性(TRRIP)作業グループと共にデルファイ調査を実施し,クロザピン治療のコンセンサス・ガイドラインを作成した。

方法

2022年2月~7月にコンセンサス・デルファイ調査を実施した。合意形成にはデルファイ法を用い,3回のオンライン調査を行った。第2/第3回では,各質問/声明/要旨について75%以上の「合意」閾値を設定し,50%以上75%未満の一致率は,「合意」には至らず,「推奨」ではなく「ガイダンス」と見なした。

結果

第1回では,合計49名のTRRIP会員が調査に参加し,平均臨床経験年数は27.8年[標準偏差(SD)=10.0]であり,クロザピン処方患者治療経験は平均181.6名(SD=164.4)であった。第2回調査に32名,第3回調査に48名が参加した。

第三選択抗精神病薬治療としてのクロザピンは,陽性症状,緊張病,持続性認知機能障害,持続性心理社会的機能障害に対して合意レベル(75%以上,以下「合意」は「推奨」と同義)の同意を得た。持続性陰性症状に対する本剤の第三選択としてはガイダンスレベルであり,自殺傾向,攻撃性,錐体外路症状,遅発性ジスキネジアを伴う陽性症状の臨床シナリオについては,第二選択または第三選択治療としての合意が得られた。

本剤投与開始後4週間は,バイタルの毎日チェック(入院患者)または毎週チェック(外来患者)が必須であると推奨された。最初の4週間における心臓モニタリングの必要性についての合意は得られなかったが,ガイダンスとして,本剤開始後4週間は週1回のC反応性タンパク(CRP)及びトロポニンT/I検査と,少なくとも1回の心電図が提案された。

クロザピン単剤療法の開始にあたっては既存の抗精神病薬のクロス漸増戦略が推奨された。陽性症状に対する第三選択治療では300~400mg/日と400~500mg/日で合意が得られた。高齢者,小児・青少年,非喫煙者,アジア系の患者ではより低い目標用量でコンセンサスが得られ,更に高齢者,小児,青少年には緩やかな増量が推奨された。

本剤投与開始後の好中球減少症/顆粒球減少症のリスクを管理するため,週1回の採血(好中球絶対数:ANC)の要件については,中央値17週(平均値=15.9週,SD=5.4,n=32)が適切であると考えられた。ANC 1,500/μL以上の過去に治療反応歴のある患者については,本薬の再投与が推奨された。

一般的に,本剤に関連する有害反応が発現した場合には,副作用に対する管理介入を開始する前に,本剤の用量を減量する戦略がガイダンスとして支持された。

結論

著者らの合意に基づく勧告は,国際的な専門家による初の国際的なデルファイ調査に基づくものであり,治療抵抗性統合失調症患者の最適な治療を促進し,将来の研究戦略を刺激するために,最先端の合意声明を提供するものである。

263号(No.5)2023年11月27日公開

(野村 信行)

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