一般集団における精神病体験の罹患率と持続性:系統的レビューとメタ解析

SCHIZOPHR BULL, 49, 1007-1021, 2023 Incidence and Persistence of Psychotic Experiences in the General Population: Systematic Review and Meta-Analysis. Staines, L., Healy, C., Murphy, F., et al.

背景

精神病体験(PE)は,重症な精神病理のマーカーであり,精神障害の診断横断的マーカーであると提唱されている。PEを訴える人は,精神病性障害を発症するリスクが4倍,あらゆる精神障害を発症するリスクが3倍高い。PE,特に持続性PEは,潜在的なメンタルヘルスの予後不良の早期リスク“マーカー”と見なされている。この潜在的な有用性を十分に評価するためには,生涯にわたる持続的なPEの割合に関する正確な情報が必要である。

方法

データベース(Embase,Psychinfo,Web of Science,MEDLINE,Pubmed PMCなど)を用いて,系統的レビューを行った。PEの検索語は,"Delus*" OR "hallucinat*" OR "paranoi*" OR "psychoses" OR "psychosis" OR "psychotic" OR "schizophr*" OR "schizotyp*" OR "psychotic experience*" OR "psychotic like experience*"とした。罹患率と持続性の測定には"incidence" OR "incidence rate" OR "follow up" OR "persistent" OR "persistence" OR "repeated" OR "reoccurrence",標本の測定には,"general population" OR "normal population" OR "normal individuals" OR "normal sample" OR "healthy population" OR "healthy individuals" OR "healthy sample" OR "community individuals" OR "community sample" OR nonpsychotic OR subclinical OR "non-patient"という検索式を用いた。

結果

合計9,621報の論文が得られ,最終的に,罹患率について報告した論文28報と,持続性について報告した論文43報を組み入れた。重複サンプルを除外した結果,PEの罹患率については16論文から19サンプル,持続性については29論文から30サンプルとなった。

17の罹患率サンプルを用いてメタ解析を行った。プールされた1人‐年当たりの罹患率は0.0225[95%信頼区間(CI):0.0129-0.0322],すなわち毎年100人中2人が初めてPEを報告することになった。年齢別では思春期(13~17歳)でPEの罹患率が最も高く,100人の思春期人口に対して,ある年に5人がPEを発症することがわかった(IR=0.0455,95%CI:0.0206-0.0703)。

基準時点でPEを報告した者の31%が,1年以内に2回目のPEを報告した。PEが初めて記録された時に青年であった者では,35.8%が持続性を報告し,これはPEが初めて記録された時に小児または成人であった者に比べて最も高かったが,年齢によるサブグループの間では有意な群間差はなかった。

大麻の使用は,大半の研究でPEの発症リスクを上昇させることが示されたが,持続性の危険因子ではなかった。基準時点における精神障害はいくつかの研究で検討され,不安症はPEの持続の有意な危険因子であることがわかったが,全ての研究においてではなかった。

結論

PEは一般的な疾患であり,毎年平均して100人に2人が新たにPEを経験することがわかった。PEの持続性は特に悪い転帰と関連しており,著者らの研究は,PEの3回に1回の確率でPEが持続することを示唆している。学術的な研究だけでなく,臨床的な実践や予防的な治療,特に若年層への治療への展開が必要である。

263号(No.5)2023年11月27日公開

(大谷 愛)

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