副作用について話すこと,話さないことが治療関係に及ぼす影響:対照臨床試験

ACTA PSYCHIATR SCAND, 148, 208-216, 2023 Effects of Talking About Side Effects versus Not Talking About Side Effects on the Therapeutic Alliance: A Controlled Clinical Trial. Muschalla, B., Müller, J., Grocholewski, A., et al.

背景

精神療法には,症状の悪化や治療依存などの副作用がある。一般的な副作用のモニタリングと話し合い,特に標準化された評価の使用が,副作用そのものをもたらし,治療関係に悪影響を及ぼすかどうかについては,今のところ不明である。

本研究の目的は,副作用の体系的なモニタリングと話し合いが,患者と心理士が認識する治療関係にどのような影響を与えるかを調査することである。

方法

本研究は2021年4~8月にドイツのブラウンシュヴァイク工科大学(Technische Universität Braunschweig)の行動療法外来において実施した。16名の心理士[女性15名,男性1名;平均年齢35.00歳,標準偏差(SD)=10.95]が参加に同意し,36組の患者‐心理士のペアを分析することができた。36名の患者のうち27名は女性,平均年齢は37.94歳(SD=12.52)であり,外来で平均29.18(SD=19.24)セッションの精神療法を受けており,不安症と気分障害を有していた。調査した治療は全て認知行動療法(CBT)であった。

患者と心理士を対照群または介入群のいずれかに割り付けた。対照群では通常通りのケアが行われ,副作用は特に取り上げられなかった。介入群では1回のセッションで,unwanted events in the view of patient and therapists(UE-PT)チェックリストに記入し,副作用について話すことによって副作用のモニタリングを行った。両群とも,治療関係を評価するために,研究開始時と4週間後に治療関係尺度(Scale for therapeutic alliance:STA-R)に記入した。

介入群では,心理士が患者に対して,精神療法が患者の負担になり得ることはよく知られており,起こり得る問題を認識し話し合うことが重要であるという説明を行った。対照群では,STA-Rを記入しただけで,副作用については明確に触れなかった。

結果

患者の性別,治療のセッション数,患者と心理士の初期STA-R評点に関しては,両群間に差はなかった。

介入群の心理士は100%の症例でなんらかの望ましくない事象を観察しており,患者1名当たりの望ましくない事象の数の平均は5.50(SD=2.52)であった。介入群の患者は85%の症例がなんらかの望ましくない事象を報告し,その数の平均は3.59(SD=2.62)であった。望ましくない事象は,患者と心理士の両方から,問題の複雑さ,負担の大きさ,または過負荷な治療,仕事上の問題,症状の悪化として最も多く報告された。

介入群の心理士は90%の症例で少なくとも一つの副作用を報告しており,患者1名当たり平均2.45(SD=1.73)であった。

介入群では,患者の恐怖と心理士の干渉が有意に減少し,絆と自信に満ちた協力が有意に増加した。対照群では有意な変化は見られなかった。包括的治療関係評点は,介入群では有意な改善を示したが,対照群では有意な改善は見られなかった。

結論

患者はより多くの問題,特に依存,治療の遷延,治療関係,スティグマに関する望ましくない事象を報告した。このことから,心理士による評価が難しい領域があることが示唆されたため,UE-PTスケールのような標準化された評価を用いることが有用と思われる。

介入群の心理士と患者は,副作用について話した後に治療関係が改善したことを報告したが,対照群ではそのような変化はなかった。

263号(No.5)2023年11月27日公開

(大谷 愛)

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