MIND食と認知症リスクとの関係

JAMA PSYCHIATRY, 80, 630-638, 2023 Association of the Mediterranean Dietary Approaches to Stop Hypertension Intervention for Neurodegenerative Delay (MIND) Diet With the Risk of Dementia. Chen, H., Dhana, K., Huang, Y., et al.

背景と目的

認知症は,ヘルスケアシステムの負荷になっているのと同時に,高齢者のウェルビーイングを脅かす存在でもある。そして,認知症に対する効果的な治療法がないため,予防が非常に重要である。様々な潜在的危険因子の中で,特定の栄養素,食品群,食習慣などの食事の因子が注目を集めている。

地中海食(Mediterranean diet)と高血圧を防ぐ食事方法であるDietary Approaches to Stop Hypertension(DASH)食を組み合わせたMediterranean-Dietary Approaches to Stop Hypertension Intervention for Neurodegenerative Delay(MIND)食が,アルツハイマー病のリスク低下,認知機能の低下抑制と関連があるとの報告がある。MIND食は菜食を中心とし,動物性食品と飽和脂肪酸を制限するほか,ビタミンと抗酸化物質を多く含むベリー類と緑黄色野菜の摂取を推奨していることが大きな特徴である。MIND食と認知機能に関する先行研究はあるものの,認知症もしくはアルツハイマー病との関連を評価した研究はほとんどない。923例を対象としたMemory and Aging Projectでは,平均4.5年の追跡期間において,MIND食を実践すると,アルツハイマー病のリスクが低くなることが示された。ロッテルダム研究では,当初の7年間においてMIND食と認知症の発症との関連は統計学的に有意であったが,それ以降は有意ではなかった。個々の栄養素について,認知機能への良い影響が示唆されているが,MIND食が認知症予防に果たす役割については,結論が出ていない。

方法

本研究では,MIND食の実践と,あらゆる原因による認知症の発症についての三つのコホート研究,すなわち英国のWhitehall II Study(WII),米国のHealth and Retirement Study(HRS)とFramingham Heart Study Offspring cohort(FOS)の評価を行った。更に,MIND食と認知症発症のリスクとの関係を解明するため,五つの論文で報告された11のコホート研究のメタ解析を行った。

MIND食評点は,10種の推奨される食材(緑黄色野菜,その他の野菜,ナッツ類,ベリー類,豆類,全粒穀物,魚,鶏肉,オリーブオイル,ワイン)と,5種の避けるべき食材(赤身肉,バター,チーズ,菓子,ファストフード)の摂取状況によって,0~15点で評価した。評点が高いほど,MIND食をより実践していることを示す。

結果

コホート解析では,基準時点に認知症でなかった18,136名の男女が対象となった。内訳は,WIIが8,358名[平均年齢(標準偏差:SD)は62.2歳(6.0),男性5,777名(69.1%)],HRSが6,758名[平均年齢(SD)は66.5歳(10.4),女性3,965名(58.7%)],FOSが3,020名[平均年齢(SD)は64.2歳(9.1),女性1,648名(54.6%)]であった。基準時点の平均(SD)MIND食評点は,それぞれ8.3(1.4),7.1(1.9),8.1(1.6)であった。166,516人‐年で775名が認知症を発症した。多変量補正Cox比例ハザードモデルで解析した結果,MIND評点で3群に分けたうち,評点が最も低い群に比較し,最も高い群は認知症のリスクが有意に低かった[ハザード比(HR)=0.81,95%信頼区間(CI):0.67-0.98]。この関係は,性別,年齢,体格指数(BMI)で定義されたサブグループでも一貫して認められた。

11のコホート研究を対象としたメタ解析では,224,049名の対象者において,5,279例の認知症発症が認められた。MIND食評点で3群に分けたうち,最も評点の低い群に比較し,最も高い群において認知症発症のリスクが有意に低かった(HR=0.83,95%CI:0.76-0.90;I2=35%)。

結論

MIND食を遵守すると,中高年における認知症発症のリスクが下がることが示された。

263号(No.5)2023年11月27日公開

(真鍋 淳)

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