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【テーマ:遷延性悲嘆②】
自殺喪失の影響における抑うつと自殺リスクに対する遷延性悲嘆の縦断的寄与:自己批判の調整的役割
【テーマ:遷延性悲嘆②】
自殺喪失の影響における抑うつと自殺リスクに対する遷延性悲嘆の縦断的寄与:自己批判の調整的役割
J AFFECT DISORD, 340, 658-666 2023 The Longitudinal Contribution of Prolonged Grief to Depression and Suicide Risk in the Aftermath of Suicide Loss: The Moderating Role of Self-Criticism. Levi-Belz, Y., Blank, C.
はじめに
家族を自殺で亡くした遺族(自死遺族)には,抑うつや自殺を含む深刻な精神保健上の問題を引き起こすリスクがあると認識されている。特に遷延性悲嘆(prolonged grief)や,自殺に関連した羞恥心(shame)が,自死遺族の抑うつや自殺を促進することが最近の研究で主張されている。また,自己批判(self-criticism)は,種々の精神障害と関連を有し,自死遺族では自殺リスクを上昇させる重要な人格的要因となることが示唆されている。本研究で著者らは,自殺喪失に続く遷延性悲嘆,羞恥心,抑うつ,自殺リスクの関連と,これらの関連における自己批判の調整的役割(moderating role)を調査した。
方法
家族または親密な友人を自殺で亡くした遺族189名に対し,2016年に初期調査を行い,2,4,6年後の調査で回答が得られた152名(女性130名,年齢18~70歳)を対象とした。
遷延性悲嘆は15項目の改訂版複雑性悲嘆質問票(Inventory of Complicated Grief-Revised:ICG-R),自殺に関連した羞恥心は5項目外傷関連恥質問票(Trauma Related Shame questionnaire),自己批判は抑うつ経験質問票(Depressive Experiences Questionnaire:DEQ)の6項目の自己批判要素,抑うつは患者健康質問票(Patient Health Questionnaire:PHQ)-9,自殺リスクは改訂版自殺行動質問票(Suicidal Behaviors Questionnaire-Revised:SBQ-R)を用いて評価した。
各因子の相関について,調整媒介モデル(moderated mediation model)と条件付き間接効果仮説を検証した。
結果
調整媒介モデルにより,強い自己批判は,遷延性悲嘆の縦断的寄与に加えて,遷延性悲嘆と羞恥心との関連(β=0.23,p<0.001),羞恥心と抑うつとの関連(β=0.22,p<0.001)を強化したことが示された。重要なことに,抑うつと自殺リスクの両者に対する,羞恥心の水準を介した遷延性悲嘆の間接効果は,自己批判の強い自死遺族にのみ見出された。
考察と結論
本研究の限界は,対象が自発的な参加者に限られること,インターネットのスキルを要すること,質問票法のみの調査であること,自殺前の評価が欠如していること等である。
本研究の結果は,遷延性悲嘆の強い自死遺族において,抑うつと自殺リスクを促進させる上で,自己批判が重要な縦断的役割を果たしていることを強調している。自殺喪失の影響における,自己批判及び自殺に関連した羞恥心に対処するための介入を含む,治癒過程と集中的な臨床勧告に関する理論的含意が議論されている。
264号(No.6)2024年2月9日公開
(久江 洋企)
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