リスペリドンの持効性皮下注射製剤TV-46000の統合失調症に対する効力と安全性:米国とブルガリアにおける無作為化臨床試験

LANCET PSYCHIATRY, 10, 934-943, 2023 Efficacy and Safety of TV-46000, a Long-Acting, Subcutaneous, Injectable Formulation of Risperidone, for Schizophrenia: A Randomised Clinical Trial in the USA and Bulgaria. Kane, J. M., Harary, E., Eshet, R., et al.

はじめに

TV-46000はリスペリドンの持効性皮下投与型抗精神病薬であり,2023年4月に米国で承認された。本試験は,経口リスペリドンで安定化した成人及び思春期の統合失調症患者を対象に,再燃予防を目的としてTV-46000の月1回投与及び2ヶ月に1回投与の安全性と効力をプラセボと比較検討するためにデザインされたリスペリドン皮下徐放製剤(Risperidone Subcutaneous Extended-release:RISE)試験である。

方法

本試験は,リスペリドン経口投与による12週間の非盲検安定化期(ステージ1)と,TV-46000皮下投与による無作為化二重盲検再燃予防期(ステージ2)から構成された。スクリーニングの1年以上前に統合失調症と診断され,スクリーニング前24ヶ月以内に少なくとも1回の再燃があった患者を対象とした。ステージ1に登録された患者は,以下の基準を満たした場合,ステージ2に進むことができることとした。すなわち,精神的または身体的悪化がない,試験プロトコールが遵守されている,基準時点で無作為化する前の少なくとも連続4週間は安定していたこと,である。

TV-46000の皮下投与を月1回,TV-46000の皮下投与を2ヶ月に1回,プラセボ投与のいずれかに,患者を1:1:1の割合で無作為に割り付けた。

主要エンドポイントは,ステージ2における再燃までの期間であった。有効性の一次解析では,リスペリドン経口投与で安定化した全ての成人患者が,最初に無作為に割り付けられた治療から最後の治療または早期治療中止までの期間において,再燃に至るまでの時間の差を推定値とした。

主要解析にはKaplan-Meier生存解析と,層別化ログランク検定を用いた。ハザード比(HR)及び両側95%信頼区間(CI)は,治療を共変量とし,無作為化に用いたのと同じ層別化因子を用いた層別化Cox比例ハザードモデルにより推定した。

結果

スクリーニングされた1,267名の患者のうち,863名がステージ1に登録された。544名の患者がステージ2の基準を満たし,このうち183名が月1回のTV-46000皮下投与群,180名が2ヶ月に1回のTV-46000皮下投与群,181名がプラセボ群に無作為に割り付けられた。

プラセボに対して,TV-46000を月1回皮下投与した場合(HR:0.200,95%CI:0.109-0.367,ログランクp<0.0001),再燃に至る期間は5倍延長し,TV-46000を2ヶ月に1回皮下投与した場合(HR:0.375,95%CI:0.227-0.618,ログランクp<0.0001),再燃に至る期間は2.7倍延長し,再燃リスクはそれぞれ80%,62.5%低下した。

考察

本研究の知見と安全性特性を考慮すると,TV-46000皮下投与は,成人の統合失調症患者に対する有効な治療選択肢である。

266号(No.2)2024年7月1日公開

(野村 信行)

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