統合失調症における精神病理と社会機能の関連についての系統的レビューとメタ解析

SCHIZOPHR BULL, 49, 1470-1485, 2023 A Systematic Review and Meta-Analysis of the Association Between Psychopathology and Social Functioning in Schizophrenia. Handest, R., Molstrom, I. M., Henriksen, M. G., et al.

背景

社会機能の障害は,本人にとっても社会にとっても,統合失調症における主要な課題の一つである。しかし,統合失調症における様々な精神病理と社会機能との関連を包括的に検討した系統的レビューやメタ解析はまだない。

本系統的レビューとメタ解析の目的は,統合失調症スペクトラム障害患者における精神病理と社会機能との関連を包括的に検討することである。

方法

本系統的レビューとメタ解析は,Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses(PRISMA)ガイドラインに従って実施した。精神病理と社会機能の関連を示す研究を,PubMed,PsycInfo,Ovid Embaseで検索した。

主要転帰は,精神病理の様々な領域と社会機能との関連とした。副次転帰は,社会機能の下位領域と精神病理の下位領域との関連とした。ランダム効果モデルを用いた一連のメタ解析を行い,①全体的な社会機能と全体的な精神病理,②全体的な社会機能と精神病理の下位領域,③社会機能の下位領域と精神病理の下位領域との関連を検討した。社会機能と精神病理との間の相関係数及び回帰係数をエフェクトサイズとして用いた。研究間の異質性が高いと推定されたため,ランダム効果モデルを使用した。異質性は,算出されたQの変換において推奨されているI2として記述した。

結果

精神病理の総合得点を報告していた研究は7件のみで,539名の参加者が含まれていた。全体的な社会機能と全体的な精神病理との間には-0.51[95%信頼区間(CI):-0.63--0.37]の相関が認められた。

全体的な社会機能と精神病理の下位領域との相関を検討していた研究は25件で,合計2,845名の患者を対象としていた。五つの精神病理の下位領域は全て,全体的な社会機能と有意な負の相関を示した(p<0.01)。最も強い相関は全般症状(r=-0.52,95%CI:-0.6--0.43)及び陰性症状(r=-0.52,95%CI:-0.61--0.42)との間に認められ,次いで解体症状(r=-0.35,95%CI:-0.54--0.14)及び陽性症状(r=-0.32,95%CI:-0.39--0.25)で,最も相関が弱かったのは抑うつ症状であった(r=-0.23,95%CI:-0.33--0.11)。

社会機能の下位領域と精神病理の下位領域との相関を検討していた研究は15件で,合計2,104名の患者を対象としていた。「個人的・社会的関係」と全体的な精神病理との間(p=0.02)と,「個人的・社会的関係」と陽性症状及び陰性症状との間に(いずれもp<0.01),それぞれ関連が認められた。

結果には有意な異質性があり,I2は52~92%であった。

結論

本研究は,精神病理と社会機能との関連を包括的に検討した初めての系統的レビュー及びメタ解析である。全ての精神病理の下位領域が社会機能と相関するという知見は,統合失調症における社会機能の障害は主に陰性症状の結果であるという見解に疑問を投げかけるものである。統合失調症に関する古典的な精神病理学の文献で示されているように,社会機能の障害は統合失調症の症状そのものであると考える方が適切であろう。  

266号(No.2)2024年7月1日公開

(米澤 賢吾)

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