小児期早期における自閉症介入研究のメタ解析(AIMプロジェクト):最新版の系統的レビューと副次解析

BMJ, 383, e076733, 2023 Autism Intervention Meta-Analysis of Early Childhood Studies (Project AIM): Updated Systematic Review and Secondary Analysis. Sandbank, M., Bottema-Beutel, K., LaPoint, S. C., et al.

背景

自閉症児には,長期的に良い転帰をもたらす可能性のある領域での技能習得を促進するために,小児期早期の介入がしばしば強く推奨される。しかしながら,推奨される介入の種類は,国によってアプローチと強度の点で大きく異なる。

そこで,著者らは自閉症介入メタ解析(AIM)プロジェクトを実施し,自閉症児の転帰を支援するためにデザインされたあらゆる非薬物的介入に関する系統的レビューとメタ解析を行った。その成果は臨床ガイドラインに組み込まれ,若年自閉症児に対して推奨される介入を策定する上で活かされている。

2017年11月にAIMプロジェクトの最初の検索が行われたが,その後自閉症に関連する研究への資金提供や論文発表の割合が大幅に増加しており,アップデートする必要が出てきた。

方法

8歳未満の自閉症児を対象とし,対照群を設定して,非薬物的な介入の効果を検証した研究を組み入れた。2021年11月17日に,AIMプロジェクトの最初の検索と同じ条件で,2017年11月1日(前回の検索日)以降に発表された研究の検索を行った。データベースとしては,Academic Search Complete,CINAHL Plus with full text,Education Source,Educational Administration Abstracts,ERIC,Medline,ProQuest Dissertations and Theses ,PsycINFO,Psychology and Behavioral Sciences Collection,SocINDEXを用いた。

結果

252件(173件の無作為化対照試験と79件の準実験的研究)の研究から289個のデータセットが得られ,これらには13,304名の参加者と3,291の転帰に対する効果が含まれた。

無作為化対照試験によるものに限定すると,効果が有意であったのは,社会的感情または挑戦的行動の転帰に対する行動介入の効果(Hedges’ g=0.58,95%信頼区間0.11-1.06,p=0.02),社会的コミュニケーションに対する発達的介入の効果(0.28,0.12-0.44,p=0.003),自然主義的発達行動介入による,適応行動(0.23,0.02-0.43,p=0.03),言語(0.16,0.01-0.31,p=0.04),遊び(0.19,0.02-0.36,p=0.03),社会的コミュニケーション(0.35,0.23-0.47,p<0.001),自閉症の診断的特徴の指標(0.38,0.17-0.59,p=0.002)に対する効果,技術に基づく介入による,社会的コミュニケーション(0.33,0.02-0.64,p=0.04)及び社会的感情または挑戦的行動(0.57,0.04-1.09,p=0.04)に対する効果であった(表)。

介護者や教師の報告による結果を除外すると,社会的コミュニケーションに対する発達的介入の効果(0.31,0.13-0.49,p=0.003)と,社会的コミュニケーション(0.36,0.23-0.49,p<0.001),自閉症の診断的特徴の指標(0.44,0.20-0.68,p=0.002)に対する自然主義的発達行動介入による効果が有意であった(表)。

更に,検出バイアスのリスクが高いものを除外するために効果を制限したところ,自閉症の診断的特徴の指標(0.30,0.03-0.57,p=0.03)に対する,自然主義的発達行動介入のみが有意であった(表)。

結論

自閉症の幼児を支援するための介入についての報告は,この4年間で約2倍となった。本メタ解析により,小児に対する早期からの介入には,特定の転帰を改善する効果があることが示唆された。

表.閾値をより厳しくした、介入と転帰の種類による分散効果及び要約効果の推定値

266号(No.2)2024年7月1日公開

(黒瀬 心)

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