アルコール使用障害に対する薬物療法:系統的レビューとメタ解析

JAMA, 330, 1653-1665, 2023 Pharmacotherapy for Alcohol Use Disorder: A Systematic Review and Meta-Analysis. McPheeters, M., O’Connor, E. A., Riley, S., et al.

背景と目的

アルコール使用障害は,米国で2,830万人以上に影響を及ぼし,障害と死亡の発生率の上昇と関連している。

本系統的レビューとメタ解析では,米国食品医薬品局(FDA)で承認されている,あるいは,米国でアルコール使用障害に対して一般的に使用されている9種類の治療法の効力を評価した。

方法

PubMed,Cochrane Library,Cochrane Central Trials Registry,PsycINFO,CINAHL,EMBASE上で2012年11月1日から2022年9月9日まで検索を行った。その後,2023年8月14日にPubMed上で検索を更新した。

組み入れの対象となった研究は,アルコール使用障害の成人が登録され,FDAで承認された薬物(アカンプロサート,ジスルフィラム,naltrexone*)を評価しており,外来で少なくとも12週間の治療が行われた研究であった。効力の結果については,上記の薬のうち一つをプラセボまたは別の薬と比較した二重盲検無作為化臨床試験(RCT)を対象とした。有害事象の転帰については,効力の検討のために組み入れた二重盲検RCTに加えて,前方視的コホート研究なども対象とした。

主要転帰はアルコール消費(アルコール使用の有無,大量飲酒への復帰,週の飲酒回数で定義)とした。副次転帰は,有害事象(有害性)とした。各研究についてバイアスのリスクを評価し,エビデンスの強さを評価した。RCTのメタ解析にはランダム効果モデルを用いた。連続転帰については加重平均差と95%信頼区間(CI)を算出し,二値転帰については群間リスク比(RR)と95%CIを算出した。治療必要数は,二値転帰のプールされたリスク比が統計的に有意な結果を示し,有益性のエビデンスの強さが中等度以上であった薬物について算出した。

結果

118件の臨床試験,20,976名の参加者のデータが組み入れられた。プラセボと比較して,1人が飲酒を再開するのを防ぐのに必要な治療回数(95%CI)は,アカンプロサートで11回(1-32回),経口naltrexone 50mg/日で18回(4-32回)であった。プラセボと比較して,経口naltrexone(50mg/日)は,治療必要数が11(95%CI:5-41)であり,大量飲酒への復帰率の低下と関連していた(RR=0.81,95%CI:0.72-0.90;p <0.001)。注射用naltrexoneは,30日間の治療期間における飲酒日数の減少と関連していた(加重平均差=-4.99日,95%CI:-9.49--0.49日)。

副作用としては,アカンプロサート(下痢:RR=1.58,95%CI:1.27-1.97)及びnaltrexone(吐き気:RR=1.73,95%CI:1.51-1.98;嘔吐:RR=1.53,95%CI:1.23-1.91)がプラセボと比較して胃腸障害が多かった。

なお,これまでジスルフィラムに関する四つのRCTが発表されているが,組み入れ基準に合致せず,本レビューには含まれなかった。

結論

アルコール使用障害の治療に対するエビデンスが最も強かったのは,アカンプロサートと経口naltrexone(50mg/日)であった。これらの知見は,心理社会的介入と併せ,アルコール使用障害に対する第一選択薬物療法として経口naltrexone 50mg/日及びアカンプロサートの使用を支持している。

  • 日本国内では未発売

266号(No.2)2024年7月1日公開

(大谷 洋平)

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