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単極性うつ病における処方パターン:113,175名を10年間追跡したデンマークの全国登録に基づく研究
ACTA PSYCHIATR SCAND, 149, 88-97, 2024 Prescription Patterns in Unipolar Depression: A Nationwide Danish Register-Based Study of 113,175 Individuals Followed for 10 Years. Jorgensen, A., Larsen, E. N., Sloth, M. M. B., et al.
はじめに
単極性うつ病は深刻かつ一般的な精神疾患であり,薬物療法が治療の一角を担う。エビデンスに基づいた抗うつ薬の使用は臨床的に重要である。本研究では.単極性うつ病患者の大規模コホートにおける処方パターンを明らかにし,最終的には薬剤のカテゴリーとうつ病の重症度ごとに治療失敗のリスクを定量化することを目的とした。
方法
デンマークの全国登録を用いて,2001年1月1日~2016年12月31日に外来及び入院にてICD-10で単極性うつ病と初めて診断された18歳以上の患者を確認し,診断前5年から診断後5年までの処方箋を収集した。抗うつ薬の他,リチウム,及び気分障害にて使用されやすい抗精神病薬(クエチアピン,アリピプラゾール,オランザピン,リスペリドン)も対象とした。
データはサンバーストプロットを含む記述統計で解析した。Cox回帰を用いて,薬剤のカテゴリーとうつ病の重症度ごとに,治療失敗のリスク(治療方針の変更のハザード比)をランク付けした。
結果
全調査対象者は113,175名で,女性が63.4%,男性が36.6%であった。年齢は18~39歳が47.8%,40~79歳が45.4%,80歳以上が6.8%であった。68.3%が単一エピソードで,31.7%が反復エピソードであった。重症度は14.2%が軽症,44.0%が中等症,14.4%が重症の非精神病性,4.5%が重症の精神病性であった。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は診断前(55.4%)と診断後(47.7%)のいずれにおいても,またうつ病の重症度を問わず,第一選択薬として最も多く処方されていた。治療方針の変更は頻繁であり,病院での診断後に2回目,3回目,4回目の治療を試みたのはそれぞれ60.8%,33.7%,17.1%であった。半数以上の患者は診断後も診断前の抗うつ薬を継続していた。多剤併用は診断前の19.5%,診断後の45.0%で行われていた。組み合わせとしては,診断前ではSSRI+α2受容体遮断薬(α2-RA)(36.8%),SSRI+セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)(10.7%),α2-RA+SNRI(9.7%)の順で多く,診断後ではSSRI+α2-RA(24.6%),α2-RA+SNRI(10.1%),SSRI+抗精神病薬(9.1%)の順で多かった。
全体として,治療方針のパターンはうつ病の重症度が上がるほどに,複雑度が増す傾向にあった。また,処方においてはしばしばガイドラインが遵守されていなかった。治療方針の変更のリスクは,一般的に軽症~中等症うつ病では低く,重症うつ病では高く,三環系抗うつ薬の併用のリスクは軽症~中等症うつ病で最も高く,重症うつ病では最も低かった。
結論
これらの結果をもとに,抗うつ薬の使用を最適化できれば,単極性うつ病患者の臨床的な効果を更に改善できる可能性がある。
267号(No.3)2024年9月17日公開
(内沼 虹衣菜)
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