精神病性障害に対する運動介入の系統的レビューとメタ解析:運動の強度,マインドフルネスな要素,その他の調整因子が症状,機能,心代謝系の健康に及ぼす影響

SCHIZOPHR BULL, 50, 615-630, 2024 Systematic Review and Meta-analysis of Exercise Interventions for Psychotic Disorders: The Impact of Exercise Intensity, Mindfulness Components, and Other Moderators on Symptoms, Functioning, and Cardiometabolic Health. Rißmayer, M., Kambeitz, J., Javelle, F., et al.

背景

運動療法(ET)は精神病性障害に対する効果的な追加治療であり,精神病症状や抑うつ症状,心理社会的機能,生活の質(QoL),認知機能,心代謝系の健康の改善に繋がる。しかし,ETの有益性の報告は研究によって大きく異なる。

本系統的レビューとメタ解析では,精神病性障害患者の精神病症状や抑うつ症状,心理社会的機能,QoL,心代謝系の健康の改善を対象とした運動介入について検討した。

方法

2022年3月に,データベースPubMed,Web of Science,PsycINFOを,検索文字列(schizophrenia OR psychosis OR psychotic)AND(“high intensity” OR interval training OR aerobic OR exercise OR physical activity)を用いて検索した。国際疾病分類(ICD)またはDSM-IVまたはDSM-5によって診断された精神病性障害の患者を対象とした研究のみを対象とした。介入については,少なくとも4週間にわたり,少なくとも8回の監督下の運動セッションで構成されているものを組み入れた。比較条件として,通常治療(TAU),能動的対照,その他の治療(作業療法など)が含まれた。

結果

合計40報がメタ解析に含まれた。ほとんどの研究は,統合失調症(20報)または統合失調症スペクトラム障害(12報)を対象としていた。

ETにより陰性症状[標準化平均差(SMD)=-0.34],陽性症状(SMD=-0.18),陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)総得点(SMD=-0.37),抑うつ症状(SMD=-0.70),QoL(SMD=0.55)が有意に改善した(全てp<0.01)。

マインドフルネスに基づく運動(MBE)を含むETは,含まない介入と比較して,PANSSの陽性症状及び総合精神病理尺度の強い改善を示した(共にp=0.04)。

2群間比較に基づくと,中強度運動(SMD=-0.39)は低強度運動(SMD=-0.03)に比べてPANSS総点がより大きく改善した(p=0.01)。PANSS総点に対するETの有意な効果は,中強度トレーニング(p=0.01)では示されたが,低強度トレーニング(p=0.80)では示されなかった。同様に,抑うつ症状に対する中等度ETの効果(SMD=-1.17)と低強度ETの効果(SMD=-0.37)の間には有意差(p=0.04)があり,個別解析では,抑うつ症状に対するETの有意な効果は,中等度では認められたが(p=0.02),低強度では認められなかった(p=0.24)。

抑うつ症状に対するETの効果は年齢によって中和され(p=0.012,R2=47.1%),若年患者ほど介入効果が高いことが示された。

結論

全ての患者にとって最適なトレーニング強度を想定することは不可能であるが,介入効果を誘発するための最小限の強度と,1週間以内のセッションを少ない回数で長く行うのではなく,短い時間で複数回行うことは,将来的に個別化された治療形態を開発するための枠組みとして役立つ。

268号(No.4)2024年10月28日公開

(大谷 愛)

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