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精神病性障害における問題のあるギャンブリング:有病率に関する系統的レビューとメタ解析
ACTA PSYCHIATR SCAND, 149, 445-457, 2024 Problem Gambling in Psychotic Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis of Prevalence. Corbeil, O., Anderson, É., Béchard, L., et al.
背景と目的
「問題のあるギャンブリング(problem gambling:PBG)」とは,いわゆるギャンブル障害から,診断基準を満たさないものの当人の社会的活動に好ましくない影響を及ぼす程度のギャンブル行為までを包括する概念である。
物質使用障害,双極性感情障害,パーソナリティ障害などの精神障害を有する患者ではPBGの有病率が一般人口に比べて有意に高いという報告はあるが,精神病性障害とPBGとの関連を評価した報告はほとんどない。PBGと精神病性障害では複数の危険因子が共通しており,PBGの併存は精神病性障害の患者の回復を妨げる因子であるとも考えられる。本研究では,系統的レビューとメタ解析の手法を用いて,精神病性障害患者におけるPBGの全体有病率を評価した。
方法
Medlineなどのデータベースを用いて,精神病性障害(統合失調症スペクトラムまたは精神病性気分障害)の患者を含み,PBGの有病率について報告している実験的及び観察的研究を包括的に抽出した。
各研究の質を評価するため,Joanna Briggs研究所(JBI)のチェックリストを用いて,有病率に関する系統的レビューに現れるバイアスのリスクを評価した。
プールされた全体の有病率を,一般化線形混合効果モデルの固定効果として算出し,フォレストプロットで表した。
結果
スクリーニングされた計1,271報の研究のうちメタ解析の対象となったのは12報で,全体で3,443名の精神病性障害の患者が含まれていた。12報のうち,5報は低バイアス,7報は中等度バイアスのリスクがあると評価された。人種について報告されていた5報の研究によると,対象患者は主に白人(57~96%)であった。平均年齢は,2報の研究で25歳未満であったが,それ以外の研究では34.0~53.7歳であった。女性が過半数を占めていたのは1報のみ(52%)で,残り11報では男性が過半数(51~94%)であった。
精神病性障害におけるPBGの全体の有病率は,8.7%[95%信頼区間(CI):7.8-9.7%]であったが,I2=69%と異質性は高かった(図)。特に,低バイアス群ではPBGの有病率は5.6%(95%CI:4.4-7.0%)と低いのに対し,中等度バイアス群では10.4%(95%CI:9.2-11.7%)に達しており(図),両群間で統計学的に有意な差が認められた(p<0.01)。また,PBGの診断や評価に用いたツールによって分類したサブグループ解析を行うと,群間の有病率に有意な差が見られ(p<0.01),異質性の原因となっていることが示唆された。一方,出版年,地理的因子,外来や入院といった研究環境,精神障害の下位分類などのサブグループ間での有病率の差は認められなかった。
考察
精神病性障害におけるPBGの有病率のメタ解析の結果は,高い異質性を示した。異質性の主な原因は,各研究間のバイアスリスクのバラつきや,PBGの診断や評価の方法が不均一であったことと推測される。とはいえ,最近のメタ解析研究で一般人口におけるPBGの有病率が1.29%と報告されたことを踏まえると,今回の研究から,PBGは一般人口よりも精神病性障害の患者においてより頻繁に認められる可能性が示唆される。従って,臨床現場では,精神病性障害の患者に対してはPBGの有無を習慣的にスクリーニングすべきと考えられる。
268号(No.4)2024年10月28日公開
(荻野 宏行)
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